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『BLEACH』 第74巻 久保帯人 【日刊マンガガイド】

2016/12/10


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『BLEACH』


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『BLEACH』 第74巻
久保帯人 集英社 ¥420+税
(2016年11月4日発売)


21世紀が幕を開けた年に「週刊少年ジャンプ」で連載スタートした『BLEACH』。
今年の晩夏にとうとう完結を迎え、11月には単行本でも最終巻となる第74巻が刊行された。

まずは、概要をおさらいしておこう。

主人公は、オレンジ色の髪がトレードマークの高校生、黒崎一護(くろさき・いちご)。ぶっきらぼうだが人情にあつい若者で、霊を見て会話できる力をもっている。
ある日、刀剣を振るって「虚(ホロウ)」と呼ばれる悪霊たちを退治する「死神」の少女・朽木ルキア(くちき・るきあ)と出会った一護は、生身の人間でありながら死神代行として、虚と戦う運命に導かれる。

やがて舞台は死神の世界「尸魂界(ソウル・ソサエティ)」へ移り、大きな陰謀を背景に死神たちとの戦いや和解を描いたのち、新たな勢力が続々と登場、戦いの激しさとスケールは拡大していく。

和洋折衷のスマートなビジュアル設計、「死神」という概念の独特な解釈、段階的に解放される武器から放たれる必殺技のスペクタクル、一種の変身ヒーロー的な趣向……。
様々な要素がうまくかみあった『BLEACH』は、15年にわたり「ジャンプ」本誌で人気タイトルの一角を飾り続けた。

人間を襲う虚。
虚と戦う死神。
霊力をもって虚を滅ぼす人間・滅却師(クインシー)。
虚でありながら死神に類した生態へ進化した破面(アランカル)。
死神でありながら虚の領域へ踏みこんだ仮面の軍勢(ヴァイザード)。
生まれる前に親が虚に襲われた影響で「完現術(フルブリング)」という特殊能力をもった人間たちの集団・XCUTION(エクスキューション)。

たがいに相容れず、それでいて境界をおかしあう存在が乱立する世界のなかで、最終的にすべてが主人公・一護の生まれや内面へと関係してくる最終章の味わいは、長期作品ならではの大河ロマン感だ。

最終巻では、尸魂界へ侵攻をかけた滅却師の軍団「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」のトップイであり、滅却師の始祖であるユーハバッハとの戦いがついに決着。
未来を見通すだけでなく、見通した未来の改変まで行う反則級の能力を持つユーハバッハを討つために必死でくらいつく一護を、死神仲間の恋次、大敵だった愛染、そして最初期からのライバルで大切な仲間のひとり、滅却師・石田がサポートして最後の一撃へとつなげるクライマックスはアツいという以上に感慨深い。

全体的にみて、どうなったのか始末が描かれていない状況やキャラクターが少なからず残ったのは残念だが、そこを残念と思えるだけの愛着をファンに抱かせる作品たりえたということでもあるだろう。

……さて、久保先生は今後どのようなマンガを描いてくれるのだろうか?
そこはもちろんご当人のみぞ知るというところだが、シリアスと軽妙なかけあいのメリハリが特徴的なスタイルにおいて、後者に重心を置いたコメディ作品なんかもいっぺん見てみたいなーと個人的には思うところ。
「Vジャンプ」誌で連載されていた『カラブリ』(死神たちの日常をコミカルに描いた『BLEACH』番外編のショートマンガ集)とか、とってもおもしろかったですよねえ。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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