365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月8日は成道会と無原罪の御宿りの日。本日読むべきマンガは……。
『聖☆おにいさん』 第1巻
中村光 講談社 ¥552+税
12月8日は、仏教では成道会(じょうどうえ)が行われる「おさとりの日」であり、また、カトリック教会での「聖母の無原罪の御宿りの祭日」である。
早い話が仏教とカトリック系キリスト教の記念日が被っているのである。
ならばやっぱり、ブッダとイエス・キリストが東京都の立川でまったりルームシェアをする大ヒットコメディ『聖☆おにいさん』を読むしかない(断言)!
成道会は、釈迦が苦行ののち、菩提樹の下にて悟りを開いたとされるこの日を記念して行う法要のこと。
もとよりブッダは「悟った人」という意味である。
『聖☆おにいさん』のブッダは、そのとおりのストイックな性格だ。下界でもことあるごとに「苦行スイッチ」を入れ、無欲であろうとしており、はやりものにのせられやすいイエスを「仏の顔も三度まで」などといさめている。
しかし、調理家電やお掃除グッズなど、家事関連の煩悩には勝てないことも。
また、「聖母の無原罪の御宿りの祭日」は、聖母マリアが原罪なく生まれてきた、とする教義が、1854年のこの日にローマ教皇の回勅により正式に認められたことに由来する。
時おり、下界に降りて愛息イエスに会いにくるマリアは、きよしの追っかけをしており、処女受胎で恋を知らないことからリア充へコンプレックスを持っているなど、なんだか人間の女の子(少々おばあちゃん要素も含む)のようなメンタリティだ。
このマリアさんは、どちらかといえば聖母信仰のないプロテスタント寄りのマリアなのかもしれない。とはいえ、汚れを知らなそうな天衣無縫ぶりは人をひきつける。
「中二病」気味のイエスと彼女の関係は、まさに思春期の息子と空気を読まない母、といったところで、傍で見ているブッダがフォローに奔走することも。
しかしながら、三者三様でうまくやっているようである。
出オチのような設定の『聖☆おにいさん』のロングヒットは、登場する聖人それぞれが、宗派や立場をふまえつつ、絶妙な距離感でつきあうところに、人間関係に疲れた日本人たちがいやされているからではないか?
そんな『聖☆おにいさん』は驚くことに実写化が決まっている。
多宗教の日本らしく、2つの宗教の祭日を祝いながら、「神がかった」笑いいっぱいのドラマを期待したいところである。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWEB記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。