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『疫病神とバカ女神』 第2巻 森拓也 【日刊マンガガイド】

2016/12/15


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『疫病神とバカ女神』


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『疫病神とバカ女神』 第2巻
森拓也 徳間書店 ¥580+税
(2016年11月19日発売)


何をやっても、どんな無茶でも、「思う」だけで自動的に守られる超強運の少女。
自称「幸運の女神」。絶対にケガをしないし、殺すことができない。
彼女は戦場の最前線に行って、地雷を踏みつけ、銃弾もミサイルも退け、説得を繰り返す。
そしてついに、世界中の戦争を終わらせてしまった。

ところが月が急接近し、地球に落ちてくるという情報が入る。
このままでは滅亡してしまう人類。
日本に何をやっても人に不運をもたらしてしまう疫病神の少年がいたからだ。
世界の首脳は、疫病神を殺せという。
だが女神は、彼をも救うことを決めた。

なんでも叶えられる女神と、なんでもうまくいかなくなる疫病神。
そもそも「幸運」と「災厄」は、なかなか絵としてかたちにしづらい。
だがこのマンガでは、マンガの自由さを駆使して、想像の範疇を超える双方の奇跡が描かれる。

たとえば、女神は力を使うとものすごいカロリーを消費する。
そのため急いで糖分補給をしなければいけない。
ところが疫病神の不運の力におされて何もかもふっとばされ、まったく摂取できずピンチに陥る。
このままでは力が戻らない、というところで、不運によって吹き飛ばされた店から超幸運で食料が降ってくる。
にもかかわらず爆発によって地割れから溶岩が吹き出し、食べものは燃えつきる。

幸運も強烈だが、不運の面倒臭さが半端じゃない。
疫病神は自分の体質を憂い続けている。女神が自分を救うなんてまったく信じられなかった。

終盤、この世界における「幸運」「不運」とは何のことなのかが明かされる。
絶対的な幸福や不幸は存在しない。
相対的で、だれかの視点を基準にしなければこの2つは成立しない。

「幸福」論哲学を含んだ、地球規模の壮大な物語。
内容は難しい方向にいっさい傾けず、「バカ女神」のバカの字で飛び越えた快作だ。

なお第2巻のカバー裏は、絶対に読み終わるまで開いてはいけない。
そして、読み終わったら絶対に、開いてほしい。
ここにもうひとつの、「幸運」の意味が隠されている。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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