365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月11日は胃腸の日。本日読むべきマンガは……。
『胃弱メシ お腹にやさしいグルメコミックエッセイ』
マキゾウ(著) バーグハンバーグバーグ(案) KADOKAWA ¥1,000+税
12月11日は、胃(1)・に(2)・い(1)・い(1)、の語呂合わせで「胃腸の日」とされている。
日本大衆薬工業協会(現在は日本OTC医薬品協会)が2002年に制定した記念日で、1年をしめくくる師走に食生活もふりかえり、何かと負担のかかりがちな胃腸をいたわる気持ちを持ちましょう、という趣旨である。
きょうはそんな記念日にド直球でうってつけのマンガをご紹介したい。
その名も『胃弱メシ』。
副題として「お腹にやさしいグルメコミックエッセイ」とついている。うん、ド直球ですね。
飲食店情報サイト「ぐるなび」が運営する「みんなのごはん」にて連載中のマンガで、東京各所の実在店・実在メニューを取材したガイド的な内容である。
主人公は、フリーランスでデザイナーをしている伊賀洋太・27歳。
子どものころから胃が弱く、腹巻きと胃薬が手放せない体質のため、食生活にいろいろ制約が生じている青年だ。
同世代の友人たちは若さにまかせて、肉だー、アブラものだー、とガッツリした食事に誘ってくるので肩身がせまい。
仕事の取引先で酒を呑みにいけばそのたびグロッキー状態になってしまう。
とはいえ、おいしいものを食べたいという欲求そのものは年相応にあるので、街に出かければいつも「何か胃に優しいメシはないかな…」とお店選びをすることになる。
さらさら、まろやかで胃にきもちいい麦とろつきの紅鮭定食。
消化にいい中華のお粥。
胃粘膜の新陳代謝を助けて胃酸をおさえるビタミンたっぷりのキャベツを使ったロールキャベツ。
という具合に、出てくる料理すべて、評価する基準が「胃にやさしい」かどうかで徹底しているのがユニークだ。
エピソードの合間に挟まれる豆知識コーナーも、「食欲不振には食前の入浴がおすすめ!」だとか「文豪、夏目漱石は胃弱で有名!」だとか、とにかく胃弱ネタで一貫。
単行本の途中にはインタビュー企画記事が収録されているのだが、そちらも料理関係者などではなく、「スクラート胃腸薬」を作ったライオンの薬品事業部へ話を聞きにいくという、ちょっと他作品ではお目にかかれない発想で構成されている。胃薬の情報が満載のグルメマンガって……!?
ごはん系マンガが百花繚乱の現在、まずなんらかのおいしい食べものがあって人間がそれに合わせる作品は数多い。
しかし、まず食べる人間のほうにどのような身体のコンディションがあって、それに合う食事はどんなものか、さらにその範囲で最大限においしいものは……? と、あくまで人間本位でグルメを追求する趣向を、(単発のエピソードではなく)作品全体のメインテーマとした本作は貴重な存在だ。
胃弱をいたわろうと訴える記念日のきょう、ぜひ読んでおきたい1冊となっている。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7