『子連れ狼 愛蔵版』第1巻
小池一夫(作) 小島剛夕(画) 小池書院 ¥648+税
1702(元禄15)年は、赤穂四十七士が吉良義央を討ち取ったいわゆる「元禄赤穂事件」が起こったことで有名だが、ちょうどこの年の8月17日に、大和国(現在の奈良県)芳徳寺の第一世住持・列堂義仙が没した。
列堂の父はかの有名な柳生但馬守宗矩……とここまで聞いて気づいた人は、なかなかの時代劇マニア。
柳生列堂は、小池一夫原作の傑作時代劇マンガ『子連れ狼』の主人公・拝一刀の宿敵「柳生烈堂」のモデルとされている。将軍家兵法指南役として幕府の表舞台に立った江戸柳生にかわり汚れ仕事を引き受ける「裏柳生」の総帥として一刀の妻・薊(あざみ)を殺害した烈堂は、『子連れ狼』全編にわたる敵役として縦横無尽に謀略をめぐらせた。
このことからモデルとなった列堂にも悪役というイメージが定着。その後の創作にも大きな影響を与えた。若山富三郎主演の実写版が、80年代から海外展開したことで、『ロード・トゥ・パーディション』や『キル・ビル』といったハリウッド映画でも元ネタとなった。
最近ではライトノベル『百花繚乱 SAMURAI GIRLS』に“ぎったん”こと柳生義仙が登場するが、彼女も異能力を手にした宿敵としてとして主人公たちの前に立ちはだかる。
ちなみに『子連れ狼』の烈堂は、八丁河岸で一刀に決闘を挑み、卑劣な策略をもって愛刀「胴太貫」を折らせついに彼を倒すも、一刀の息子・大五郎が繰り出した槍に腹部を貫かれ絶命する。
いまわの際に烈堂が放った「我が孫よ……」という言葉の意味は、今もって謎のままである。
<文・富士見大>
編集プロダクション・コンテンツボックスの座付きライター。『衝撃ゴウライガン!!兆全集』(廣済堂出版)、『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、平成25年度「日本特撮に関する調査報告」ほかに参加する。