話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『異世界居酒屋「のぶ」 しのぶと大将の古都ごはん』
『異世界居酒屋「のぶ」 しのぶと大将の古都ごはん』第1巻
蝉川夏哉(作) くるり(画) 宝島社 ¥690+税
(2016年4月20日発売)
出張で訪れた町や、気まぐれで降りた駅でフラリと入ってみたお店が大当たり。場所を変え河岸を変え、うまい料理に舌鼓を打つ――という『孤独のグルメ』がTVドラマ化を境に大ヒットして以来、「ひとつの店」にやって来るお客との交流を描く伝統的な料理マンガは、実数はさておき、存在感を少し減らした印象があった。
本作は、そんな昔ながらの「料理屋マンガ」の流れに連なる作品だ。ただひとつ違うのは、出店しているロケーション。「居酒屋が異世界に出店している」という点だ。裏口は日本につながったままだし、電気ガス水道は普通に使える。でも表の入り口を開ける と、そこは中世ヨーロッパ風の異世界が広がっているのだ。
さらに、このマンガは同名のライトノベルのコミカライズだ。
似たようなタイトルを見た覚えが……と気づかれた読者は鋭い。昨年12月に、角川コミックス・エース(連載・ヤングエース)から別バージョンのヤングエース版が発売されていて、このサイトでもレビュー済みである。
そう間を置かず刊行された2冊のコミカライズ。だからこそ、料理人の違いによる2つの味付けが楽しめる。じゃがいもというひとつの素材だって、調理しだいで肉じゃがやポテトサラダに化けるのだから。