六三四の剣 1
村上もとか 小学館 ¥720
6月3日の午後4時生まれで、つけられた名前は"六三四"(むさし)。村上もとか『六三四の剣』は剣道少年・夏木六三四の成長を描いた物語だが、作者の村上自身も1951年の6月3日に生まれている。
村上には『六三四の剣』のほかにも剣道を扱った作品が多いのだが、じつは作者本人は剣道未経験だという。作品を描くにあたって、近所の教室に半年ほど通っただけなのだとか(弊社刊行『別冊宝島 ザ・マンガ家列伝』より)。それでもリアリティにあふれた描写で、剣道の魅力をまっすぐに描ききっているのはさすが。
ちなみに当時、剣道についての取材元になっていたのは、村上夫人の友人の義理の弟さんなのだが、その人はなんと『ドラゴン桜』の大ヒットで知られる漫画家・三田房紀!
当時、洋服店店主をしていたという三田は、村上に触発されてマンガを描くようになったのだという。(弊社刊『このマンガがすごい!2006 オトコ版』より)。
『六三四の剣』は、2人の漫画家の道を作った作品でもあるのだ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2014 Summer』が6月5日に発売に。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。