日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『八雲さんは餌づけがしたい。』
『八雲さんは餌づけがしたい。』 第2巻
里見U スクウェア・エニックス ¥562+税
(2016年11月25日発売)
28歳、料理が好きな八雲柊子(やくも・しゅうこ)。夫を数年前に亡くし、ひとり暮らし。
アパートの隣の部屋に住むのは、高校1年生の野球少年、大和翔平(やまと・しょうへい)。
ひとり暮らしの大和に、たまたまおにぎりを持っていった八雲。
大和はそれを、あっという間に平らげた。
育ち盛り。彼女は思いつきで彼にいう。
「おなか空いたら うちにご飯食べにいらっしゃい」。
毎晩「ただいま」と八雲の家を、大和が訪れる。八雲はうれしそうに、作った料理を並べる。
ひとりの食事はつまらない。だれかのための食事は楽しい。
八雲が大和のためにご飯をつくる、と決めてからは、毎日が満ち足りたものになっていく。
ご飯をつくる未亡人のもとに通う男子高校生、というシチュエーション。
第2巻の表紙は特にすばらしい。この関係がものすごくエロティックであるのをほのめかしつつ、2人が決してセクシャルなつながりになっていないのを描いている。
第1巻で、八雲の頭についた桜の花びらを、大和が取るシーンは、情緒たっぷりだった。
2人がともにいる時間がのびるにつれ、大和の「思いやり」が大きく育った。
あまり考えず、いっぱい食べさせてもらっていた大和。
次第になぜそうなっているのか、八雲の感情を少しずつ理解してくる。
そもそも未亡人なのだ。さみしいに決まっている。
コミュニケーションが得意ではない彼も、傷つけないよう気をつかう。
「なんか俺にできる事 あるといいな」
第2巻中盤からは、大和のターンが増える。
ある虫が出てパニックになる八雲。彼はさくっと退治し、「いつでも連絡してください」とメールする。
風邪をひいて八雲がダウン。
彼はスポーツ飲料にかぜ薬、レトルトのおかゆを買ってきて、初めて八雲に食べさせる。
動物は、餌づけすることでなつく。
一方で、食事を通じて恩義を感じ、何かしてあげたいと感じるのが、人間だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」