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『高杉さん家のおべんとう』第10巻 柳原望 【日刊マンガガイド】

2015/08/18


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『高杉さん家のおべんとう』第10巻
柳原望 KADOKAWA ¥590+税
(2015年7月23日発売)


いやー、恋が叶うまで、長かった!
ここまで何年も「待ち続けてきた」「うまく言えない」2人。
なんとも成長したものです。

1巻では31歳だった、地理学者の高杉温巳(たかすぎ・はるみ)、通称・ハル。理屈っぽくてうまく感情を伝えられない。
ハルが引き取ったのは、彼の従姉妹にあたる12歳の少女・高杉久留里(たかすぎ・くるり)。考えすぎて、言葉がとぎれがち。
不器用な2人。どうやってコミュニケーションを取ればいいか? その手段として選んだのがお弁当。

家族のお弁当には「だれかのために作る」「自分たちにはこれを食べる明日がある」という意味合いが含まれている。長い目で見た人間関係が育まれている証だ。
これを、10巻続けてきた。気がつけば久留里は18歳。ハルはアラフォー。
連載初期段階からハルに想いを寄せていた久留里だったが、彼が4年間フランスへ行ってしまうこととなり、ついにはっきりと告白をする。
帰ってきたら40代と22歳。

このマンガは、「遠まわりなコミュニケーションの大切さ」を描いた作品だ。
2人の距離のとり方は、あまりにもどかしい(特にハル)。
ハルは、人生においての致命的な失敗を重ねながらも、なんとか久留里と関係を築いてきた。
だれかに「遅い」と言われても、ハルと久留里のテンポは遅いくらいで調度よかったようだ。
さすがに久留里は何度も怒っていましたが。

ラストで、久留里がお弁当を題材に、自分がどこにいるか探してほしい、という謎掛けをしてくる。ハルに投げかけられたその問は、絶対に解けなければいけないものだった。
これを、ハルはすぐに解いて、彼女のもとに駆けつける。

お弁当は、食生活の縮図であり、家族の縮図。
10巻の完結でついに、ハルと久留里のお弁当箱は、2人にだけわかる、特別な「会話」になった。
おめでとう。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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