日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ぼのちゃん』
『ぼのちゃん』第2巻
いがらしみきお 竹書房 ¥1,000+税
(2016年12月8日発売)
『ぼのぼの』連載30周年記念、まだ何もできない赤ちゃんのぼのぼのと育児に奮闘するおとうさんの姿を描いた新シリーズ第2巻。
ストーリーも描写もセリフも最小限だからこそ、読者の想像が入りこむ「余白」の魅力は『ぼのぼの』本編と同様。
ボーッと読み流しながらクスッと笑ったり、ふと考えさせられたり、思い思いに楽しめる感じは、何かと過干渉で情報過多な世のなかでは、稀有なものだ。
ぼのぼのに赤ちゃんのシマリスくんにアライグマくん……。マイペースで一生懸命な彼らがかわいすぎて、それを見守るおとうさんたちの姿もほほえましく。育ち方も愛情の表現も人それぞれ、いろいろあっていいよな~としみじみさせられる。
今年3月に発売された『ぼのぼの』本編の第41巻では、これまで触れられずにいた「おかあさん」の秘密が連載30年目にして、ついに明かされた。
このなかの
「ぼのを育てないと いけなかったからね
生きていくしか なかったし」
「治すために 生きようと 思った」
「生きてることが治してくれるよ」
という、おとうさんの言葉を読めば、『ぼのちゃん』も単に育児ほのぼのエピソードにはとどまらない「祈りの物語」なのだと気づかされる。
『誰でもないところからの眺め』といった著者のシリアスな作品群とは真逆のようで、根っこでつながっている、これは現代の「救済の物語」なのかもしれない。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69