日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『中間管理録トネガワ』
『中間管理録トネガワ』 第4巻
萩原天晴(作) 三好智樹、橋本智広(画) 福本伸行(協) 講談社 ¥580+税
(2016年12月6日発売)
〈カイジシリーズ〉の名脇役・利根川幸雄が主人公となる作品。
スピンオフ作品にもかかわらず、第4巻の時点で累計100万部を突破。
さらには『このマンガがすごい! 2017』のオトコ編ランキングで第1位を獲得したのである。
利根川は、ご存じのとおり、金融コンツェルン・帝愛グループの幹部社員である。
カイジの最初の登場作『賭博黙示録カイジ』で、「限定ジャンケン」のホールマスターとして登場。
カイジをはじめとするゲーム参加者に「勝たなきゃゴミ‥‥‥」と悪魔的な言葉を投げつけて、強烈な印象を与えた。
本作『中間管理録トネガワ』は、利根川とその部下である黒服たちの日常を描いたもの。
利根川は、絶大な力があるとはいえ、帝愛グループ会長の兵頭和尊から見れば、一介の部下に過ぎない。
上司である兵藤のわがままに振り回され、部下の黒服からは突き上げられ、といった中間管理職のありがちな悩み/悲哀を、ダンディな利根川が味わうというギャップが本書の楽しみどころといえようか。
「限定ジャンケン」をかたちにし、兵頭会長を満足させた利根川だが、次はどんな難題に直面するのか? 第5巻も気になるところである。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。現在発売中の「ミステリマガジン」2017年1月号(早川書房)に、2016年のミステリコミックの総括を執筆。また、同誌のコミック評では、池田邦彦『グランドステーション ~上野駅鉄道公安室日常~』を紹介しています。