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12月30日はハッブルが系外銀河の発見を論文発表した日 『銀河英雄伝説』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/12/30


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

12月30日はハッブルが系外銀河の発見を論文発表した日。本日読むべきマンガは……。


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『銀河英雄伝説』 第1巻
田中芳樹(作) 藤崎竜(画) 集英社 ¥514+税


「ハッブル」といえばハッブル宇宙望遠鏡がおなじみだが、本日は、その名の由来である天文学者エドウィン・ハッブルにちなむ日付となっている。

第一次大戦後に米国カリフォルニア州のウィルソン山にある天文台の職員となったハッブルは、当時最大クラスの望遠鏡を用いて天体観測を行い、様々な成果を生んだ。
特に有名なのが、地球のある銀河系の外側にもまた別の銀河(系外銀河)があるのだという発見である。
1920年代の初め頃までは、望遠鏡のスペックの低さから、いわゆる星雲として見えているなかにあるのはすべて私たちのいる銀河系内にある天体ではないかという見当がつけられていた。
しかしハッブルがそこに別の銀河の存在が確認できることを明らかにし、論文にまとめて発表したのだ。
その発表日が1924年の12月30日である。

さて、「銀河」のイメージから連想して、今回は田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』のマンガ版を取りあげてみたい。

「銀英伝のマンガ版」とだけいうと、くわしい方は「どの?」と問われるだろう。
1980~90年をとおして徳間書店系列の雑誌で道原かつみ・鴨下幸久が外伝や本編一部分を描いたマンガがあるほか、非公式のパロディ筋だが『あなたの知らない銀英伝』なんてのもあった。アレはみのり書房の「アニパロコミックス」誌でしたね。

そのあたりは懐かしい思い出に託しておいて、今回は「週刊ヤングジャンプ」で現在連載中のコミカライズ最新作に言及したい。

作画担当は、藤崎竜。
「ヤングジャンプ」はしばらく前から少年マンガ出身の作家を起用する流れがあり、ジャンプ本誌で『封神演義』をヒットさせた藤崎竜も、伝奇系のマンガ『かくりよものがたり』を連載したことがあった。
それが今度はスペースオペラ、しかもあの『銀英伝』を描くという異色の組み合わせだ。いったいどうなるのか。

その前に、ひとまず大筋をおさらいしておこう。

ワープ航法を確立した人類が大宇宙へ進出したのち、貴族制度を敷く銀河帝国と、そこから脱した人々が打ち立てた自由惑星同盟が戦争を繰り広げている、遠い未来。
貴族の家柄だが貧しい暮らしをしていたラインハルトは、愛する姉を時の皇帝に見初められ、後宮へと奪われてしまう。
姉を奪い返す決意を燃やすラインハルトは忠実なる親友キルヒアイスとともに軍人になり、天才的な戦術の数々を披露して出世街道を突き進む。

そしてもうひとり、同盟側にも傑出した天才が存在した。
歴史研究を志す温和な人物ながら、すぐれた洞察力ゆえに軍人として高い功績を立て続ける男、ヤン・ウェンリー。
2人の天才は敵味方にわかれながらも、互いの能力を認め、同時に自らの属する陣営の腐敗と戦っていくことになる……。

おおよその流れは原作と同じだが、藤崎版『銀英伝』は、現状ラインハルト側の視点により重点を置き、彼をすさまじい激情の人間として表現している。

愚劣なものに媚びず、退かず、省みない生き方で周囲を圧倒するラインハルト。
お姉ちゃんを奪った皇帝許すまじ! というモチベーションが常にぎらぎらたぎり、眼光がするどいのを通り越してもう目からビームでも撃ちそうな勢いだ。
極まった感情の激しさは純粋さでもあり、彼が青年時代に入ってもどこか年若い少年のままのようにも見えて、そのあたりに「週刊少年ジャンプ」作家だった藤崎氏の持ち味を感じられる。

銀河にゆかりのある日のきょう、星々の大海原を勇ましく生きた英雄たちの物語にふれるというのは乙なものではないでしょうか。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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