365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
1月6日はケーキの日。本日読むべきマンガは……。
『西洋骨董洋菓子店』 第1巻
よしながふみ 新書館 ¥520+税
さかのぼること138年前(1879年/明治12年)1月6日、上野風月堂が日本で初めてケーキの宣伝を行った。
上野風月堂は1747年(延享4年)創業。ちと、ややこしいですが……138年前の時点で創業132年の老舗菓子店だったわけだ。
第9代将軍・徳川家重の時代から270年経った現在も営業中って、すごいことだよなぁ。
てなわけで1月6日は「ケーキの日」。今や小・中学生女子のなりたい職業でパティシエが1位に輝く時代。だからして洋菓子界隈をモチーフにしたマンガも多いが、本日紹介するのは、よしながふみが1999年から2002年にかけて「月刊ウィングス」に連載した『西洋骨董洋菓子店』だ。
舞台は住宅街のなかにひっそりと佇むケーキ専門店「アンティーク」。
その名のとおりアンティーク張りの豪華な内装が自慢で、イートインの際には名だたる食器も使用。しかも深夜2時まで営業しているので、よいっぱりの大人たちには重宝されている。もちろんケーキも絶品だ。
そんなアンティークのスタッフは、わけあって20代から30代前半の男性ばかり。
ケーキは苦手だけど接客は完璧なオーナーの橘、天才パティシエにして魔性のゲイという裏の顔を持つ小野、世界チャンピオンまでのぼりつめたボクサーだったが網膜剥離で引退を余儀なくされた神田、サングラスでコワモテだけど、あらゆる面でボンクラな小早川……。そんなアンティークにやってくるユニークな客たちと彼らの交流が、おいしそうなケーキを交えて描かれる。
2001年には滝沢秀明主演でドラマ化(「アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~」)され、その後はアニメ化、韓国での映画化など、よしながふみの出世作となったことはご存じのとおり。
すでに連載開始から18年の月日が流れたが、今読みかえしても洒脱なエピソードの数々はまったく古びておらず、あらためてよしなが作品の魅力を再確認したしだいだ。
それにしても「ケーキ」って、一度でも口にしたり目にしたりすると、無性に食べたくなる恐ろしい言葉ですよね。
私、この原稿を書き終えた瞬間、近所のケーキ店にかけこむ予定です。当レビューを読んでいるそこのアナタも、1時間後、否、10分後にはケーキを食べている……。そんな未来予想図が見えますよ。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。