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『さんかく窓の外側は夜』 第4巻 ヤマシタトモコ 【日刊マンガガイド】

2017/01/04


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『さんかく窓の外側は夜』


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『さんかく窓の外側は夜』 第1巻
ヤマシタトモコ リブレ ¥628+税
(2016年12月10日発売)


ヤマシタトモコの『さんかく窓の外側は夜』の最新刊。

昔から不気味なモノを視てしまう体質の三角(みかど)は、除霊を生業にしている冷川(ひやかわ)に無理やりコンビを組まされ、様々な事件に挑んでゆく――。

「オカルトもの」というだけで、荒唐無稽なファンタジーと思ったら大間違い!

ヤマシタトモコという人は、赤裸々な女の子の生態や人間の本性を描かせたらピカイチの作家だが、ここでいう「霊や呪い=人間のもつ潜在的な恐怖や悪意」と解釈すれば、霊に支配されて顔つきまで別人のように変わってしまった人、みずからの欲望のために呪いを操る女子高生・英莉可(えりか)、霊の影響をまったく受けないリアリストの刑事・半澤、といったモチーフが、深淵でリアル極まりない意味をおびてくる。

冷川に体のなかに手をつっこまれ、霊的なものに触れられ、感覚や感情を奪われると同時に、抗いがたい性的快感に襲われる三角など、BL好きの心をくすぐる一方で、心とカラダのどうしようもない乖離を描いたシーンは、まさに著者ならではの真骨頂!

軽妙&ちょいエロなタッチでクスリと笑わされた直後にゾクッとさせられる、この錯乱した不安定な世界観は、まさに「さんかく」と納得。

純粋に怖すぎるホラーとして楽しめる一方で、人間の深淵をこれでもかとえぐり出し、「自己と他者」「精神と肉体」「人間の業」「呪縛と救済」といったテーマを浮かび上がらせるさまは、山岸凉子の諸作を彷彿させるが、それをさらに「凹凸コンビの霊感BLエンタメ」に着地させる離れ業は、マンガ史において前人未到なのではないだろうか。

本巻では三角の両親の出会い、連続失踪者と謎の宗教団体と英莉可の関係性が描かれるなど、いよいよ物語の核心に踏みこんできた感じ。

もし絵のタッチなんかで「少女マンガでしょ」とスルーしている人がいたら、だまされたと思って、今からでもぜひ!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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