日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『オデット ODETTE』
『オデット ODETTE』 第3巻
日当貼 ほるぷ出版 ¥600+税
(2016年12月14日発売)
「他人の不幸は蜜の味」とかいうけれど、じゃあ、幸せそうな人を見ている時に感じる幸福感てなんなんだろう。別に自分に得があるわけでもなし。
『ODETTE』を読んでいる時に味わえる「満たされた感覚」は、たぶんこの不思議な幸福感と同じものだ。
超無口だけど気の利く彼氏(猫氏?)と、普通の彼女。
読者にとっては、彼氏の顔がどう見ても猫であることと、決して声を発しないこと以外、変なことは何もない。
もっとも、これが猫じゃなくて人間の顔で普通に話すキャラクターだったら「こんな彼氏、現実にはいないよ!」と思ってしまうかもしれない。いや、いるんだろうけど。いると信じたいし、信じてもよさそうなくらいのリアリティがあるんだけど。
ともあれ、今回2人が向かうのは夜景クルーズや蚤の市へ!
とりたてて何かが起きるというわけでもなし、ただ淡々と幸せそうな2人の様子をながめるだけ。「幸せ」とか「幸福」と書いてしまうことすら、ちょっとおおげさな気がしてくるくらい、なにげない、このただ「時間が過ぎていく」感じ。いいなあ。
「1時間だけ別行動して そのあと一緒にまわろ!
集合はココで!
別行動があんまり長いと寂しいから1時間で…」
とかね。わかる。わかるよそれ!
別行動はしたいけど、集合もしたい。このささいな提案は大事なんだよ、あとなんか「1時間後に集合」っていう〆切感と、そのあとにお互いに見つけたものを共有する感じが、集合したあとの会話をね、盛り上げるわけですよ。
こうわざわざ書いてしまうと野暮だし、作中では別行動にならないんだけど、結局。
ドラマチックにはならない、のんびりとした雰囲気に浸りたい、そんなに人にはおすすめの作品。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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