日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ウルトラマンG』
『ウルトラマンG』
島本和彦 小学館 ¥1,250+税
(2016年12月15日発売)
1990年は日本特撮界にとって不遇の年であった。
『ウルトラマン80』と『仮面ライダースーパー1』の放送終了後、『ウルトラマン』・『仮面ライダー』という、日本を代表する2大ヒーローは雌伏の時をせまられ、唯一東映だけが『美少女仮面ポワトリン』、『特警ウインスペクター』、『地球戦隊ファイブマン』を放送するも……という時代。
一方で、1988年にアメリカでテレビ放映されたアニメーション(!)『ウルトラマンUSA』を経て、ウルトラマンは世界に進出していた。
そして、円谷プロダクションがオーストラリアで製作した特撮ドラマ『ウルトラマンG(グレート)』である。
80年代のウルトラシリーズ終了後も旧作品の再放送や映像ソフト化、そして1989年にスタートした夏の定番イベント「ウルトラマンフェスティバル(ウルフェス)」など、精力的なキャラクター展開によって存続し続けた同シリーズの新作を求める声に応じて製作されたもので、1990年のウルフェスでのお披露目では多くのファンの注目を集めた。
のちに同じ文脈で“復活”をとげた『仮面ライダーZO』をコミカライズすることになるご存じ熱血漫画家・島本和彦が幼年誌「テレビマガジン」で1年間にわたり連載した『ウルトラマンG』が26年の時を超え、このたび新装版で復活した。1話あたり20数ページというややコンパクトな構成ながら「コマーシャルあとのBパートから始める」(「あとがき」より)という斬新すぎる手法で全14話をみごとに描ききった。
基本ストーリーは本編を忠実になぞりながらもオビの
「勝てなくては、意味はない! たとえ命を失ってもだ! 」
というアツい島本イズムはページのそこかしこからビンッビンに伝わってくる。
一気に読みきって、その勢いで最後の「あとがき」(当時の苦労がしのばれるエピソードに不謹慎ながら爆笑)まで堪能していただきたい。
<文・富士見大>
『G』が初登場した1990年には東京・池袋の「ウルトラマンフェスティバル」でライブショーに出演していたスーツアクター系編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わり、最近作は「東映ヒーローMAX Vol.54」、『「ウルトラマン超解析」大怪獣激闘ヒストリー!』。昨年12月発売の『仮面ライダーゴースト公式完全読本』にも参加しています。