日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『化野さんはすでに死んでる。』
『化野さんはすでに死んでる。』 第1巻
晴瀬ひろき 竹書房 ¥750+税
(2016年12月26日発売)
不死者が一般人に混じって暮らしている世界。専用の商品や雑誌が流通するほど。
化野(あだしの)アヤノはデザイナーとして、会社に入った。
首は取れるし、目玉は落ちる。彼女はゾンビだった。
歩く死体の化野をはじめ、デュラハンの上終幽一(かみはて・ゆういち)、ヴァンパイアの白銀伊織(しろがね・いおり)などが人間とともに暮らす、ほのぼのお仕事コメディ。
いちばんの魅力は、化野たちがポジティブなことだ。
いくら不死者が一般化した世界だからとはいえども、ゾンビが会社に来るのは珍しいこと。
どうしても奇異の目で見られ、避けられがちだ。
しかし彼女は、「死体ジョーク」をいいながらのびのびしている。
「ゾンビですが、死ぬ気で頑張ります!」
「不敗神話ですね! 腐敗してるだけに!」
ゾンビ映画が大好きで、自分がゾンビであることを堂々とアピールする化野。
なかにはメイクで隠す場合もあるようだが、化野はそれを選ばない。
最初に親しくなった人間の同僚・一条鼎(いちじょう・かなえ)にこう打ちあける。
「いえ私 ゾンビだから人より結果を出さないと認めてもらえなくて
やっぱりゾンビって近寄り難いみたいで」
「一条先輩はゾンビとして フツーに接してくれて嬉しいです」
「ゾンビを人間と同じように扱ってほしい」という描写は、いっさいない。
何がどうあろうと、ゾンビはゾンビだ。人間ではない。
彼女は「フツーにゾンビとして接してほしい」から、みずからがゾンビだと公言する。
映画を観にいった時、人間とゾンビは金額が違うことが判明する。
ゾンビは不死身なため危険な職業に就きやすいので、政府から補助金が出て割引がきくそうだ。
人間は人間らしく、ゾンビはゾンビらしく生きられる世の中づくり。
これはバリアフリーの物語だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」