日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『アベンジャーズ ゾンビ・アセンブル』
『アベンジャーズ ゾンビ・アセンブル』第1巻
小宮山優作 講談社 ¥429+税
(2015年12月9日発売)
今度のアベンジャーズの敵は、ゾンビウィルスだ!
と思ったら、チームの一員、神様のソーがゾンビになっちゃったよ、どうすんの!
トニー・スターク(アイアンマン)の誕生日に現れたひとりのゾンビで事態は発覚。気がつけば街中に異形のゾンビだらけ。
出動するアベンジャーズ。問題はゾンビたちは罪のない市民だということ、みな殺しにするわけにはいかない。
感染したソーは、自我を失いかけるほど病状が進行。ある意味最悪の敵だ。
ゾンビネタは日本人もアメリカ人も大好物。
マーベルが刊行した『マーベル・ゾンビーズ』では、ヒーローたちが全員ゾンビ化した世界で喰いあっている。スパイダーマンがギャラクタスを貪り食う様は衝撃的。人気のシリーズだ。
一方、今回の『ゾンビ・アセンブル』は日本独自展開の物語で、マーベルのマンガ準拠ではない。
映画版『アベンジャーズ』の設定に沿っており、キャラクターのデザインは俳優たちの顔に寄せて造られている。映画を見た人ならニヤニヤする小ネタが山盛り。知らない人でも細かく説明が入っているので大丈夫。
映画版と今回の『アベンジャーズ』のおもしろさは、「ヒーローたちが力をあわせ戦う」というよりも、「バラバラなヒーローたちがちぐはぐに力を貸しあう」という独特の距離感だ。
キャプテン・アメリカは生まじめなうえに、コールドスリープしてきたせいで考え方が時代遅れ。アイアンマンはリーダーシップを取れる力はあるもののマイペースで口が悪い。心拍数があがるとハルクに変身してしまうバナーは、変身してしまうと制御がまったくできないので常に精一杯。
信頼はしている仲間。だが「仲よし」ではない。このガタガタ感は、キャラの力強さとのギャップとあいまって、コミカルだ。
ゾンビになり意識があいまいなソーが、自分の取れた右目をアクセサリーと勘違いしてロマノフ(ブラック・ウィドウ)に親切に手渡すシーンは、なんだかかわいく見えてくる。
その次のコマで「ええありがとう 大事にする」と言って笑顔で彼の目玉を後ろ手に放り投げるロマノフ。
「ピンチ」と「コミカル」が並んだこの作品は間違いなく、ひとつの『アベンジャーズ』の形だ。
単行本には『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』の前日譚も収録されているので、こちらもぜひ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」