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『ヤングマーベル:リトルアベンジャーズ VS リトルX-MEN』 スコッティ・ヤング、ジュボン・J・カービー(著) ルービン・ディアズ(作) グリヒル(画) 御代しおり(訳) 【日刊マンガガイド】

2015/10/27


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ヤングマーベル:リトルアベンジャーズ VS リトルX-MEN』


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『ヤングマーベル:リトルアベンジャーズ VS リトルX-MEN』
スコッティ・ヤング、ジュボン・J・カービー(著) ルービン・ディアズ(作)
グリヒル(画) 御代しおり(訳) ヴィレッジブックス ¥2,700+税
(2015年9月30日発売)


その昔、まだ「デフォルメキャラ」という言葉が定着してなかった頃、2~3頭身にデフォルメされたキャラクターを「赤ちゃん化」と呼んでいるのを聞いたことがある。
大きなアタマにプニっとした弾力のあるような体型は、まさに赤ちゃんのようなかわいさがあって、それゆえに男性向けのキャラクターでも、デフォルメすることによって女性にも人気が出ることもあった。
また、現在もさまざまな形でリリースされるデフォルメフィギュアも女性人気が高いそうだ。

しかし、見た目が「赤ちゃん化」されていても、日本のコミックスなどでは、見た目は幼くてもパーソナリティはベースとなったキャラクターそのままであることがほとんど。
カワイイ見た目のキャラクターが、ゆる~いテイストだっりコメディタッチだったりする物語で活躍するよう描かれている。

だが、今回紹介する『ヤングマーベル:リトルアベンジャーズ VSリトルX-MEN』は、そうした単なるキャラクターのデフォルメという形で活躍する作品とはひと味違う。
そう、タイトルにあるとおり、デフォルメ化されたアベンジャーズやX-MENのキャラクターは、文字どおりヤング=子ども化されていて、見た目だけでなく、パーソナリティも子ども(もしくは赤ちゃん)になっているのだ。

本作は、アメリカ本国でミュータントの未来を担う少女・ホープをめぐってアベンジャーズとX-MENが激突する大型クロスオーバー『AVX:アベンジャーズ VS X-MEN』がリリースされている流れのなかで、箸休め的に発表された『A-ベイビーズ VS X-ベイビーズ』と、『X-MEN』本編と世界観を共有している『X-ベイビーズ』の2エピソード(先の『A-ベイビーズ VS X-ベイビーズ』とはまったく関係ない作品)を収録している。

両親が寝静まったタイミングを見はからい、姿と精神は赤ちゃんだが能力はスーパーヒーローというA-ベイビーズとX-ベイビーズがぬいぐるみをめぐってバトル繰り広げるという『A-ベイビーズ VS X-ベイビーズ』は、それ以上のストーリーがあるわけではないが、性格はそのまま赤ちゃん的な思考で行動し、暴れるヒーローたちの姿はとにかくカワイイ。

アートを担当するのは、日本人作家のグリヒルさん。
日本人的なカワイイ要素も取り入れているので、マーベルは映画のヤツを2、3作観た程度の女性でも楽しめる内容となっている。

後半に収録されている『X-ベイビーズ』は、本物のX-MENが活躍する世界の異世界である、視聴率がすべての権力に直結するモジョーの世界「モジョーワールド」で、高視聴率を取るためにX-MENの姿を模した子どもの人造人間であるX-ベイビーズの活躍を描いた物語だ。こちらも、幼稚園児レベルの身体と思考しか持たないX-MENの子ども版とも言えるキャラクターが活躍するストーリーだが、ミュータントのヴィランやアベンジャーズの子ども版も登場。
いちおう、ストーリーはあるものの、幼いX-MENたちの活躍を楽しめる内容となっている。

日本でもアメリカでも、やはりカワイイ見た目のデフォルメキャラクターは同じように人気があるわけだが、本作を読めばその微妙なとらえ方の違いがわかるようになっている。



<文・石井誠>
1971年生まれ。アニメ誌、ホビー誌、アメコミ関連本で活動するフリーライター。アメコミファン歴20年。
洋泉社『アメコミ映画完全ガイド』シリーズ、ユリイカ『マーベル特集』などで執筆。翻訳アメコミを出版するヴィレッジブックスのアメリカンコミックス情報サイトにて、翻訳アメコミやアメコミ映画のレビューコラムを2年以上にわたって執筆中。

単行本情報

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