『生き人形』
永久保貴一 ホーム社 \552+税
すでにいくつもの怪異は起こっていたが、それは序章にすぎなかったということなのだろうか。
大阪のTV局が一連の怪異を生放送で取り上げた際に、事件は起きた。スタジオには不気味な声が響き渡り、天井のライトが突如として揺れ始める。
そして画面に映し出された人形の背後には、人間ならざる者の姿が!? このおかっぱ頭に着物姿の人形こそ、怪談の主役。ある霊能者が、「この人形 生きてますよ」と鑑定した生き人形だ……。
8月21日は、独特の語り口の怪談話で知られるタレント・稲川淳二の誕生日。
その怪談の数々は、さまざまな描き手によってマンガ化もされているが、その極めつけがサイキックホラーの決定版・『カルラ舞う!』シリーズの永久保貴一が手掛けた『生き人形』だ。
あまりの怖しさに稲川自身もめったに語らない、最恐にして最凶の怪談。稲川が芝居で出合った人形が次々と怪異を引き起こしていくという内容で、冒頭に記したとおり、TVでもその怪異は生放送されている。
なによりこの話が凶々しいのは、恐怖が連鎖していく点だ。なにしろ、マンガ化を手がけた永久保も怪異に見舞われている。加えて、このあとも関係者が次々と不幸に見舞われていて、その後日談も永久保は『生き人形 続』としてマンガ化。そこでついには、生き人形が永久保のもとへ!!
真夏の夜には、ぴったりの実録怪奇コミック。ほめ言葉として、読めば後悔すること間違いなしの怖さだ。ほら、ページを開いたあなたの背後に……!
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Summer」が発売中。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。