日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『〆のグルメ』
『〆のグルメ』
土山しげる 双葉社 ¥800+税
(2016年12月28日発売)
『極道めし』、『荒野のグルメ』で知られる食マンガ・キング、土山しげるの最新単行本。
テーマはずばり、“シメの一食”である。
最後の〆、特に飲んだ後の〆は体に悪いとわかっちゃいるが、ついつい食べたくなる中毒的な魅力があるわけで……。
作中で登場するメニューは〆の定番、屋台のラーメンからコンビニメニューを利用したアレンジ飯まで、思いのほか、バラエティに富んでおり、主人公が文藝雑誌の編集者という設定ゆえ、作家宅を訪問した後の直帰昼酒から入稿明けのおつかれさまメシまで、シチュエーションも味わい深い。
久住昌之の原作のついた『漫画版 野武士のグルメ』などに比べれば、独特の設定や言いまわしのおもしろさには欠けるが、それだけにストレートに食に向かってゆく登場人物の心情が伝わってきて、シズル感あふれる擬音語を駆使した食描写は、さすが土山先生! と唸りたくなるようなリアリティにあふれている。
日々いろいろあるけど、終わりよければすべてヨシ。1日の終わりに満足たゆく〆グルメが食べられたら万事オッケーという気分になるよなあ……としみじみ。
毎日バタバタでメシに時間なんかかけていられないという人も、〆にこだわってみれば、人生がぐっと充実してくるはずだ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69