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『だんだらごはん』 第1巻 殿ヶ谷美由紀 【日刊マンガガイド】

2017/01/27


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『だんだらごはん』


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『だんだらごはん』 第1巻
殿ヶ谷美由紀 講談社 ¥581+税
(2017年1月6日発売)


「新撰組」、と聞いてときめく女子は少なくないだろう。
かつて香取慎吾くんが近藤勇を演じた大河ドラマ『新選組!』は大人気だったし、歴女ブームに一役買ったのもまた、新撰組ブームだった。

人気なだけあって、エンタメ界では「新選組もの」は定番中の定番。
切り口を変えるといったって、正直もう出尽くした感があるわけだ。

そこで『だんだらごはん』である。近藤勇に土方歳三、沖田総司に斉藤一といった、名だたる新撰組隊士たちが仲よく、ほのぼのと幕末グルメを楽しむ様が描かれている。

第1巻は、新撰組のことをあまり知らなくても、幕末を舞台としたほのぼのグルメマンガとしてするする読めるのだ。

しかし「オッ」と、ページをめくる手がとまったのは、ある登場人物が「人を殺した」と仲間の前で告白するシーンだ。人を殺してきたのだと告げるその表情が、とても平凡でいいと思った。
常軌を逸した人間の狂気とか、人生を狂わされるほどの苦しみを強いられた人間の憎しみとかではなく、ほとんど不可抗力で人を殺してしまったことに、ただただ戸惑う人間の表情という感じ。
そこがすごくいいと思った。

グルメマンガの惹句(じゃっく)の多くは「ほのぼの」だ。
そしてグルメマンガでは、食べることと生きることのつながりが、時にゆるやかに、時に鋭く描かれる。でも本来、食べることは生きることと同じくらい、殺すこととつながっている。
新撰組もまた、一瞬輝いたあとで殺されてゆく存在である。

ほのぼのとした作風を裏打ちする不穏な空気や悲しみがある分だけ、物語に引きこまれていく。
第2巻が待ちどおしい作品だ。



<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。

単行本情報

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