日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ゲスのポリス』
『ゲスのポリス』 第2巻
須﨑洋輔 講談社 ¥429+税
(2017年1月17日発売)
『初恋心中』の須﨑洋輔の最新作は、池袋駅東口交番に勤務する、型破りな警察官・八王子春透(はちおうじ・はると)が主人公のポリスコメディである。
池袋の平和を守る巡査が、「八王子」という苗字とは、ちとややこしいが……。ふだんはタバコを片手にゲームセンターでたむろしたりしている春透は、いざという時には頼りになる(日本人が大好きな「昼行灯」キャラクターですな)。
それゆえにまわりの人々から春兄(はるにい)と慕われるのだ。
「『正義』って言葉が世界で一番嫌いなんだよ!!」
「俺に正義なんてねぇよ あるのは『俺の意志』だ!!」
と口走る春透だけに、トラブルに対しても、警察官らしからぬやり方で立ち向かっていく。
だから、女子高生で起業した重盛咲が仲間とトラブったときには、暴走気味にあばれて仲間の結束を強めたり、自治会長の十条の小学生の息子・健にはケンカの心がまえを説いたりするわけである。
春透がやっていることは、まさしく「正義」なのだが、照れ屋で、ひねくれものなので、それがストレートに表現できないわけだ。
そんな春透に共感するのが、警視庁捜査一課のキャリア・渋谷秋音(しぶたに・あきね)である(ちなみに、男性)。このあたりドラマの『踊る大捜査線』あたりから定着してきた、現場とキャリアの関係性という警察ものにおける「お約束」も、しっかりおさえているのだ。
須﨑にとって『ゲスのポリス』は、初の紙媒体での連載。
掲載誌「マガジンSPECIAL」が2017年1月20日発売号で休刊したため、全2巻となったのだが、尻切れトンボではなく、うまくまとめて完結させている。
経験値のあがった須﨑洋輔の次回作を期待したい。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。
「ミステリマガジン」(早川書房)にミステリコミックの総括を執筆(隔号)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。