『ILLEGAL RARE』第2巻
椎橋寛 集英社 \370+税
(2014年8月4日発売)
幻獣や怪物が現代社会の片隅でひっそり生きる世界を舞台に、そんな「違法希少種(イリーガル・レア)」を闇市場で取引する犯罪者を取り締まるために結成された「希少種犯罪対策課」の活躍を描く本作。
主人公は自らもS級希少種である黒吸血鬼(ブラックヴァンパイア)のアクセル。そして脇を固めるのは、希少種犯罪対策課を立ち上げた謎多き男・フクメン、普通の人間でありながら完全に巻き込まれた形の殺人課の刑事・カワサキ、アクセルが救い出した人魚の歌姫・ミラ──とまぁ、言ってしまえば「極めて正統派のジャンプマンガ」である。
正直なところ連載開始当初は、前作が妖怪たちの活躍を描いた『ぬらりひょんの孫』だっただけに、「今回は西洋モンスターか」ぐらいの気持ちで読んでいたのだが、ちょうどこの2巻に収録されているあたりから物語は飛躍的におもしろくなってくる。
その最大の要因は、これまでよく言えば手堅い完成度、悪く言えば「まじめすぎ」という印象もあった作風に、一周回ってギャグにも思えるケレン味と、ドタバタ風味のコメディ要素が加味されたことかもしれない。
自分の名前をネタにした気恥ずかしいセリフをキメキメで言うアクセルや、終始ハイテンションなカワサキはその最たるもの。それでいてバトルは、「勝ったと思ったら負け」という二転三転するハードな展開で、さらに控えるであろう強敵への興味も尽きない。
そしてこの巻から登場するガーゴイルの少女・ナヴィ(その能力を現代的にアレンジした、引きこもり的な立場のハッカーというのは直球だが秀逸)や、美人市長でありながらどうやら違法希少種コレクターらしき実力者・マーダックとその一味など、敵も味方も魅力的なキャラクターがそろって、にぎやかになるのもうれしいかぎりだ。
個人的には、決して小じんまりまとまらず、想像を絶する事件やモンスターの出現で、より破天荒な展開となるのを期待したいところ。
本巻ラストで東洋のビースト・ハンターが登場しただけに、いっそ再び妖怪や東洋の幻獣も出て、極限までカオスになるのも悪くないかも?と思わないでもない。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。