日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『たそがれたかこ』
『たそがれたかこ』 第9巻
入江喜和 講談社 ¥580+税
(2017年2月13日発売)
パートと家の往復だけの、潤いのない生活を送っていた45歳のたかこ。
この年になったら人生なんてもう変わりっこない!? いやいやそんなことはありません。
ちょっとした一歩がどんどん毎日の風景を変えていく!
近所の飲食処“viva”を訪ね、モテモテのおじさま店主・美馬さんと出会ったこと、ラジオから流れてきたバンド“ナスティインコ”の音楽に惚れこんだこと。
そしてナスティをきっかけに中2の碧海くんと仲よくなって……。
登校拒否中で拒食症に苦しむ娘・一花の状態はあまり好転しないけど、そんななかで「自分が人生を楽しんでいるところを見せよう」という結論に至るたかこ。
本巻では、母であるとか45歳であるという記号にしばられず、ひとりの人間として世界に向かう、たかこのめちゃくちゃカッコいい姿にシビレまくってしまった。
次巻で完結とはさびしいけれど、どんなラストが用意されているのか楽しみ。
それにしても、たかこが碧海くんをこんなに好きになっちゃうとは予想していなかった己の先入観とつまらん常識に喝を入れたい。
これは非現実的なことじゃない……人はもっと自由な心であれるはず!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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