日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『おばけ道』
『おばけ道』第1巻
小野寺浩二(著) 石黒正数(総合プロデューサー)
¥580+税 少年画報社
(2017年2月14日発売)
まさかの! まさかの! まさかの「霊感を高めるマンガ」の登場である。
前作『ソレミテ』は「霊感のない漫画家2人が、心霊現象に遭遇するためにわざわざ心霊スポットに行く」という衝撃的な試みだった。
今回は「心霊現象に遭遇しないのならみずから霊感を高めよう」という、前作をうわまわる衝撃作だ。
「霊感を高めよう」というそもそもの目論見がズッコケてるから、それにまじめに取り組めば取り組むほどに2人のやっていることの意味不明度合いも増していく。
心霊現象(おばけ)に出会うためにあらゆる手段を試して努力する、それこそが「俺たちの『おばけ道』だ」と言われたら、もうどうしようもない。とことんやってもらうしかない。
さて今「どうしようもない」と書いたが、しかし大人がまじめに取り組んでいるのだから、何かしらの出来事は起こる。それをおもしろく読ませてしまうあたり、霊感がないとはいえ、漫画家としての力量はホントすごいと思う。プロすごい。
どうすごいのか。具体的に2人の試行錯誤を追ってみよう。
今回の彼らの試みはこんな感じ。前作で心霊現象にまったく遭遇できなかった2人は、みずからの第六感を測定することにする。ESPカードを用いた単純な実験の結果、2人とも平均以下の第六感しか持ちあわせていないことが明らかに。
そこで2人は高尾山へおもむき、まじめに滝行に挑戦する。マジかよ。
その効果を確認しようと再びカードと向きあう2人。そしてなぜか石黒正数だけ常人ではありえない第六感の冴えを発揮してしまう。
石黒正数は本当に第六感を得たのか、同じ滝行をした小野寺浩二に効果が出なかったのはなぜか。検証はさらに続けられる……。
オカルト人体実験とも言えるこのESPカードのほかに、テレパシーや催眠術、あとなんか謎のマッサージ(?)、ダウジング、バンジージャンプなど、著者の2人は果敢にチャレンジしていく。
様々な実験の成果(?)を試すべくあらためて心霊スポットへ行くエピソードもあるのだけれど、これだけ第六感のない2人(とりわけ小野寺浩二)が、もし万が一「心霊現象に出会ってしまったら」、それは本当に心霊現象がこの世に存在してるということなのかもしれない、と思って読んじゃう、読まされちゃう。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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