日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『箱庭のソレイユ』
『箱庭のソレイユ』 第3巻
川端志季 集英社 ¥400+税
(2017年2月24日発売)
事件が起こったのはあさひが小学生の時。
あさひが通う美術教室の有希先生が殺されて……つかまったのは同い年の、あさひとともに教室に通った“天使”と呼ばれる少年だった。
あさひには、彼が殺人を犯すなんてとても信じられないのだが。
それから数年後、高校生となったあさひの前に有希先生の弟・伊月が現れ、ともに事件の真相を探ることに。
さらには、あさひの高校に“天使”が転校してきて、因縁の2人は対面することに。
天使、伊月はそれぞれにどんな思惑を抱えているのか。
本巻では、天使が伊月の前で「あの日、何が起こったか」の真相を語ることに――。
あさひ、天使、伊月、そして亡き有希先生。4人の秘めた想いについてはまだ謎も多い。
本作のキモは「事件の真相解明」ではなく、この事件を個々が心のなかでどのように結着するかである。
有希先生を失った3人はそれぞれに傷つきながらも、これからの人生を生きていかねばならないのだから。
あさひが心の底から笑顔になれるのはいつの日か。
恋愛要素もありの高校生らしい日常を描きつつ、人の心の暗部にさらりと触れる。
『宇宙を駆けるよだか』に続き、チャレンジングな設定を用意した著者は今、もっとも目が離せない漫画家のひとりである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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