『クギ子ちゃんがいる!』第1巻
PEACH-PIT 講談社 \429+税
(2014年8月6日発売)
年頃の男の子にとって、女の子はいつでもミステリアス。
他愛ない言葉や仕草にちょっぴりずつ秘密がまぶしてあるようで、つい心乱されてしまうものだ。だがそれがいい。それでこそたまらない。
同作者の『クギ子ちゃん』の数年後を描いた新章にあたる本作を読むと、そんな思いを抱かせてくれる。
ある小学校に転入してきたひとりの女の子は、ちょっぴりどころでなく謎めいていた。
名は五寸鍵子(ごすんかぎこ)。右目を眼帯で隠し、季節外れの黒いコートとマフラーを着用。いつも人から距離を取り、無表情に無愛想……珍しく笑顔を見せれば牙をむくニヤリ笑い。ランドセルに大量の金属物を入れてあるらしく、ジャラジャラ重い音が鳴る。
もはや歩く挙動不審。この子はいったい、なんなんだ!?
クラス皆が不気味がるなか、怪談好きの男子・よっちゃんだけは彼女の正体に心当たりがあった。
都市伝説に噂される「クギ子さん」。釘をつめこんだランドセルを背負い、質問に正しく答えないと右目を打ち抜いてくるお化け少女。
よっちゃんにとって自分と正反対な、コワくて強くてかっこいいイメージの結晶だ。
カギ子ちゃん=クギ子さんでは? そうであってほしい、そして友達になりたい!
よっちゃんは熱心にクギ子ちゃん、クギ子ちゃんと呼びかけるが、そっけない態度で煙に巻かれ続ける。
それでも必死に食い下がるうち、よっちゃんは怪現象が囁かれる夜の学校でカギ子に勇気を示すチャンスをつかむ。
少年の意地を見直したカギ子がやっと明かし始める裏事情。謎の転校生は果たして「クギ子さん」なのか? だとすれば彼女が学校に来た理由は……?
秘密を抱えた女の子にふりまわされる、悶々とした気持ちと、女の子からこっそり秘密を告げてもらうごほうび感。それらを交互に敷きつめて、憧れの対象に手が届きそうで紙一重に届かないもどかしさを逆に心地よく感じさせる。
学校の怪談ベースのボーイ・ミーツ・ガールを、おおいに楽しもう。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7