日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『新米姉妹のふたりごはん』
『新米姉妹のふたりごはん』 第3巻
柊ゆたか KADOKAWA ¥570+税
(2017年2月27日発売)
親の再婚によってとつぜん家族になった2人の女子高生が、日々のごはんづくりを通して姉妹の絆を育んでいく『新米姉妹のふたりごはん』。
その最新巻が2月より発売中である。
活発でひとなつっこく、くいしんぼうな姉「サチ」。
長い黒髪がうるわしい見た目クールな美少女、だがじつはひどく遠慮がちで感情表現が不器用、それでいて料理のこととなるとテンションがあがる妹「あやり」。
性格を補いあってひとつに調和するような相性のいい2人が、様々なレシピへの挑戦を楽しみながら、さりげないやりとりのなかでお互いの魅力に気づいていくという、情緒あふれる親愛ドラマの趣はますます深まるばかり。
具体的な題材としては、ガスバーナーでプリンの表面を焦がしたクレーム・ブリュレ、今や日本でも知名度は高いが自作すると難易度が高いマカロン、レーズンを酒に漬けるところから始めるラムレーズンアイスクリームなど、スイーツ方面が多い巻となっている。
どれも作成手順が丁寧に描写されており、読者もつられて自分でためしてみたくなる度合いが高い。
また、新キャラとして、猟師をしているあやりの叔母・みのりさんの登場に注目。
サチには親友キャラの絵梨がいるように、あやり側の脇をかためる存在として今後も活躍が期待される。
みのりさんがお土産にくれた鹿肉をロティ(ロースト)にしてワイルドなジビエ料理を味わうくだり、おいしそうだけどどんな感じなんだろう……。
と、想像で我慢するしかないと思いきや、最近はネット通販で手に入るんですね。
調理器具などもふくめて、読者がひと手間かけたら同じものを口にできる範囲をずっと徹底しているさじ加減がお見事です。
『醤油手帖』で知られる料理マンガ研究家・杉村啓氏も、第1巻の巻末に寄せたコラムで、やはり本作は「特別なんだけれども、少し頑張れば手を出せる」ものがテーマになっていると解説している。
これはもちろん一次的にはサチ達がつくる料理のことをさすが、同時に、2人の関係性そのものにも意味がかかってくるコンセプトとみなせるだろう。
今回、サチがとあるエピソードの重要な決めどころで「ほんとに姉妹だよ」というひと言を口にする場面がある。
ごはんづくりをサチとあやりががんばったことで手に届いた、特別な関係。
それが、一見さりげないコマひとつに凝縮されている。
ここまできたか……と感慨にひたる第3巻でありました。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7