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【インタビュー】五十嵐大介『ディザインズ』ほぼひとりであの作画量!? 最新2巻も発売で話題の「けもの」マンガはこうして作られている!!

2017/04/02


「五十嵐大介」という作家の来歴


──五十嵐先生は「月刊アフタヌーン」(講談社)の四季賞で四季大賞を受賞してマンガ家デビューしました。なぜ四季賞に応募したのでしょうか?

五十嵐 じつは最初は少女マンガ誌に送ろうと思って描いたんです。というのも、その当時の少女マンガ誌はいろいろなものが載っていると感じたからなんですね。
だから自分のマンガも、そっちだったら載せてもらえるんじゃないかと思ったんです。ただ、実際に少女マンガ誌に送ってみたら、「いまは恋愛ものが主流だから、こういう世界観が出ている作品は青年誌のほうがいいよ」といっていただいたんです。

──「アフタヌーン」は自由ですよね、四季賞はページ数の制限もありませんし。

五十嵐 「アフタヌーン」じゃなかったら、私はデビューできなかったと本当に思っています。しかも、あのタイミングでの「アフタヌーン」。変な感覚をおもしろがっていたという時期で、黒田硫黄さんとかがワーッと出てきた時期ですね。本当に運がよかった、タイミングがたまたま合ったんです。今の「アフタヌーン」は、みんなエンタメとしてしっかりしているので、今だと私はデビューできないんじゃないかな(笑)。

──それまでマンガは?

五十嵐 全然描いてないです。小学生の頃から絵を描くのが好きだったので、なんとなく漫画家に憧れてはいましたけど、たいへんそうだなぁ、と。なれたらいいな、くらいには思っていましたけど、ちゃんと「漫画家になろう」とは思っていなかったです。

──それは意外です。

五十嵐 新しいことを始めるのが苦手というか、面倒くさがりなので、道具とか調べて買いそろえるのも、もうその時点で「めんどうくさいな」って思っちゃうんですね。

──では、どうして「アフタヌーン」に投稿を?

五十嵐 正直にいえば、賞金狙いの「おこづかい稼ぎ」くらいの気持ちでした。

──そうだったんですか?

五十嵐 大学を卒業して、とくに就職活動もしなかったし、時間もあったので。ただ、そこで一生懸命考えて描いて、これだけやったら佳作ぐらいもらえないかな、と思ったんですよ。そうしたら四季賞なら佳作でも賞金が出ると聞いて、それで「アフタヌーン」に投稿したんです。

──たしかに、ほかは大賞を取らないと賞金が出なかったりしますよね。

五十嵐 でも、そうしたらいきなり連載の話をいただいて……。それまでほとんどマンガを描いた経験がなかったから、「やばいな」とは思ったんですけど、こんなこと二度とないと思ったので、ダメ元で始めてみました。それからは、ほかにできることもないのでマンガをやり続けている、という感じでしょうか。

──いきなり連載はすごいですね。

五十嵐 それが『はなしっぱなし』(講談社)です。2年続けたんですけど、疲れ果てちゃって、あんまり人気もなかったので「もう限界です」という感じでやめさせてもらいました。

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『はなしっぱなし』第1巻
五十嵐大介 講談社 ¥583+税
(1995年9月14日発売)

──その連載を終えてから岩手に移り住んだんですか?

五十嵐 そうです。

──そのときの経験をもとに描かれたのが『リトル・フォレスト』(講談社)。映画化もされましたが(「夏/秋編」は2014年8月公開、「冬/春編」は2015年2月公開)、先生はどれくらいかかわりましたか?

五十嵐 いちおう、脚本は見せてもらいました。あと、撮影現場には1回行きました。もともと私が住んでいたところで撮影をしていたので、それは見てみたいな、と。

──映画はいかがでした?

五十嵐 思っていた以上に原作そのまんまだったので、びっくりしました。エピソードの順番を入れ替えているところはあるので、それでだいぶストーリーっぽくなっていて感心しました。でも、自分が住んでいた場所を1年くらいかけて撮影していたので、それに対する感慨が強いですね。

──アルバムを見るような?

五十嵐 それに近い感覚はあります。いい映画だな、ってのはありますけど、ひさしぶりにそこに帰ったような気分で見ちゃいました。あと、食べ物がものすごく出てくるので、見ていてお腹が減っちゃいますね。

──食べるシーンは、作品に意図的に入れるようにしていましたか?

五十嵐 それはあります。もともと食べるのも料理するのもすごく好きなので、がんばって描いちゃいますね。

マンガ内にも多く食べ物が登場。う~ん本当に美味しそう!!

マンガ内にも多く食べ物が登場。う~ん本当においしそう!!

──『リトル・フォレスト』と同時期に描いていたのが『魔女』(小学館)。この作品で文化庁メディア芸術最優秀賞を受賞されました。

五十嵐 いろいろなところで取りあげてもらえるようになったのは、『魔女』からですね。『魔女』こそ、私は「エンターテインメント的なものが描けたぞ」と思っていたのですが、逆に周囲からは「五十嵐さんらしい」との反応だったので、「あれ、おかしいな」という感じでした。

──これは連載というよりは、魔女をテーマにした短・中編の連作集、といった感じがしました。トルコとか北欧とか、いろいろな国や地方が舞台になっていますね。

五十嵐 五十嵐 初めは「出版社のお金で取材に行けるかな?」なんて思っていたんですけど(笑)、いざ始まってみると、全然そんな時間的な余裕はなかったです。それまで私は、一部の読者は好きといってくれていましたけど、そんなに売れているわけでもなかったので、受賞してたくさんの人から褒めてもらえたのがうれしかったですね。

──いちばん長期連載となったのは『海獣の子供』(小学館)ですか。

五十嵐 ストーリーがつながっている連載ものは、あれが初です。

──不思議な作品です。あそこで先生の中で何かスイッチが変わったのかな? という印象を受けたのですが。

五十嵐 それはあるかもしれません。デビューした当時は全然人間に興味がなくて、風景を描きたいというのがあって、そこからいろいろな経験を積むにしたがって人間の比重が大きくなっていったんですね。ちょうどそのタイミングで描くことができたのが、『海獣の子供』でした。読者の間口を広げたいな、という気分もありました。

──そしてストーリーものの連載作品として、現在の『ディザインズ』に至ります。五十嵐先生ご自身は、『ディザインズ』から入ってきた新規のファンには、どの作品をオススメしますか?

五十嵐 短編集で『そらトびタマシイ』(講談社)というのがあるんですけど、私としてはそれが読みやすいと思います。『リトル・フォレスト』とか『カボチャの冒険』(竹書房)は、幅広い層にとって読みやすいと思いますけど、私の世界観を見るなら『そらトびタマシイ』や『魔女』ではないかと思います。エッセンスがだいぶ見えますからね。

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