おもしろさの基準!? そして、次回作は!?
――そうなると気になるのは、おもしろさの基準です。
金城 そっか、基準か。どこに置いてたかな……。
――読者の予想を裏切るのが楽しい?
金城 うーん……。「やってやったぞ!」までは思っていなかったけど、「こうくると思ったやろ?」みたいなことは考えてました。ここは笑えるところ、ここはちょっと刺さるんじゃないか、みたいに考えて投げてみるんですけど、でも読者の反応は全然違う。「こっちでグッときたんか」とか「ここで笑っちゃうんだ」とか、そういった意味では読者の反応を見ながら、って感じではありました。あと、荒木さんの反応も気になってました。
――毎回ネームが送られてきて驚く感じでした?
荒木 いやぁ、もう楽しかったですね。市橋があんなに活躍するとは、思ってもいませんでした。
金城 あとづけですけどね。インテリなヤンキーのほうが格好エエかな、と。でもそれも、荒木さんの絵があればこそですよ。「このキャラ、こんな表情するのか。じゃあもうちょっとこうしてみたら、いいんじゃないか」って考えていった部分もありますから。
――「最初の読者」としての反応だけじゃなくて、絵によって膨らむ部分もあった、と。ちなみに読者の反応がよかった回は?
担当 やっぱり爆発のあった回(1巻第7話)です。
金城 あと5巻の引き(5巻第47話)は反響がありました。
――今連載を終えてみて、想定していたラストにはたどりついた感じですか?
金城 いろいろ想定していたなかのひとつ、って感じでしたね。
――どのへんで先が見えました?
金城 いや、全然。先のことは見えてませんでした。
担当 逆に「どこで終わらせるか?」って感じでしたよね?
金城 そうですねぇ、5巻までがだいたい初期想定やったんですよ。トビオがああなって、あそこで一回終われる。みんなでわーっと「自首しよう」いうてるところでも終われる。「これどうする?」ってなったときに、いろんな流れのなかで「じゃあ9巻で終わろうか」と決まったような感じです。マンガってそんなもんじゃないですか?
――よく聞くのは「ラストだけ決まっていて、そこに至るまでの道のりがあっち行ったりこっち行ったりで長くなる」的な話ですね。
金城 ああ、なるほど。それはよくわかります。でもこのマンガに関しては、それはなかったですね。どちらかというと、やりたいことが多かったんですよ。これとこれができれば、あとはなんでも……と。
――やりたいこととは?
金城 荒木さんにエロい絵を描いてもらうこと、人が死ぬこと、逃亡生活。そういう要素をちゃんとやって、それをひっくるめて「青春やったね」といえればいいな、と。
――やりたいことは全部やった感じ?
金城 そうですね。だから、もっと続けられれば続けられたけど、もうやることがないといえばない。
――けっこう『罪と罰』みたいな感じがあるな、と思いながら読んでいたんですけど。
金城 まぁ、さすがに僕らも「ちゃんと考えて作らなアカン」とは思ってましたけどね。「めっちゃ死んでんな、これ。どうする?」みたいな。ただ、そこに向き合うけれど、「そこにおもしろい答えはあんのか?」ってとこじゃないですか?
荒木 「ふざけすぎちゃう?」とか「さすがにこれ、あっけらかんとしすぎじゃないですか?」とかはよく話してましたね。
金城 でもそのたびに「このあとこうなるから大丈夫」みたいに逐一相談しながら進めていました。それが正しい意見だったりするから。
――そこでバランスは取っていたんですね。
金城 打ち合わせは4人でやっていたので、四人四様の意見があるわけですよ。「これ、こういうことになるけどわかってる? 大丈夫?」みたいなことをいってもらえるわけです。自分が考えていないことだったら、じゃあエクスキューズを入れて逃がすか、とか。だから市橋がああいうことになるとか、全然考えてなかった。5巻ラストの展開とか、好きでもない子とセックスして童貞を捨てるとか、そういうのはやりたかったです。ライブで楽しんでもらう感じが僕らは楽しいし、読んでもらう人にも楽しんでもらえたらいいな、とは思っていました。
荒木 あ、でもマルだけは、みんなふざけてましたけどね。マルにはいちばんおかしいことだけやらせる、みたいな感じでした。だから僕はマルがいちばん好きです。
金城 僕は今宵ちゃんが好きです。というか、荒木さんの描く今宵ちゃんを見たかった。僕が描いていて楽しい、というよりも、荒木さんに描いてもらったときに化けるキャラはどれか、ってことを考えていました。それこそ市橋は化けましたね。
――『ちなみにタイトルはどうやって決めました?
金城 それは担当さんが「『僕たちがやりました』でどうですか?」と提案してくれたので、僕らも「ああ、いいですね。じゃあそれで」って。
担当 「やる」には「(セックスを)犯る」とか「殺る」とか「(犯行を)実行る」とか、いろいろなミーニングがありますから。
――じゃあタイトルが決まった時点で、主人公たち4人が自首することは既定路線だった?
金城 いやいや、あの自首を決めるシーンも、流れのなかで決めたことですよ。途中から「あのシーンに向けてやっていく」みたいな感じにしようぜ、と話してましたから。だからその後の展開は「そんなんで終わるかい!」ってなるでしょ。こちらとしては「やった!」って感じですよ。
――相談しながら話を決めていくというのは、かなり珍しいタイプのマンガの作り方ですよね?
担当 あんまり聞かないですね。
金城 僕も普段からこういう進め方をしているワケじゃないんです。この4人だからこうなった、みたいなとこはありますね。楽しかったですけど、もう一度同じことをやれといわれても、無理だと思います。
――この作品をやるにあたって、編集サイドからの要望は?
担当 基本的には「若者に響くものを作ってください」とはお願いしてました。自分だったらどうするか、自分が高校生の時にこういうことがあったらどうしたか。そうやって自分に置きかえて読んでくださる方には好評をいただきました。だから編集者とかマンガ家さんとか、同業者からの評価は高かったですね。おもしろかったといってくれる方は、「もしかしたら自分もこうなっていたかもしれない」といってくれるんですよ。でも、自分の人生とリンクさせるような読み方をしない人には、「なんだコイツら。ただの悪い奴らじゃん」と映ったかもしれません。
――最近、ピカレスクを楽しんでもらえない風潮があると思うんですよ。
担当 ええ、ええ。コンプライアンスの問題もあるので、なかなか悪い奴を描きにくいんですよね。だけど主人公たちに共感してもらう必要はなくて、「自分だったらどうする」と考えてもらえたらいいな、と。それが初期のテーマでした。
――やり残したことはない感じですか?
金城 ないッス。荒木さん、ある?
荒木 もうちょっとあそこの絵をうまく描きたかった、とかはあります。
金城 そっか、作画的にはそう思うことはあるか。でも休載は一回もなく最後までいけたし。内容的には、もうやることはないですね。
担当 『2』はどうするの?
金城 え、『2』あるの? ドラマに合わせて?
担当 ドラマが終わったあとに。
金城 時期逃してるなぁ。しょうもない編集やわ、それ。センスない。
担当 「今度は女子校だ」みたいな。
金城 うわ、おもろない(笑)。
荒木 隣のお嬢様学校が舞台(笑)。
金城 絶対やりません。
取材・構成:加山竜司
金城宗幸先生&荒木光先生先生の『僕たちがやりました』
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