人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、金城宗幸先生&荒木光先生!
「それなり」の人生でよかったはずなのに、イタズラのつもりで仕掛けた爆弾が大事件に発展!? うっかり殺人犯になってしまった高校生トビオ、マル、伊佐美、そしてパイセンの青春逃亡劇のはてに待つものとは……?
2017年夏にTVドラマ化も決定し、今一番ノリにのっている『僕たちがやりました』は、『このマンガがすごい!2017』オトコ編第11位にランクインの超人気作!
前回は、本作の誕生の経緯や作品を作るまでのやり取り、そして2017年夏のドラマ化が決定したときの思いなどについておうかがいしました。 今回は、『僕たちがやりました』を構成するおもしろさや、どのようにしてリアルな登場人物像を作ったのか、そしてまさかの『僕たちがやりました2』の情報までもおうかがいしちゃいました!
「そこそこ」は意識の低い人が使う言葉!?
――登場人物が成長する話……という「わかりやすい話」に落ちつけなかったところが、よかったと思うんですよ。
金城 ちょっと自意識が変わっていくのは主人公だけかな?
荒木 マルとかクズですもんね(笑)。
――「主人公たち4人がクズ」との評判もありますが、学生時代の男子なんて地に足が着いていないというか、あんなもんじゃないかな、って気もするんですけど。
金城 あんなもんですよね。僕は「そんなもんとちゃうか?」みたいに思ってました。だし……、大人になっても、そんなもんやと思うんです。いま連載を終えて思うことは、いちおう「成長譚」ということで描いてきましたけど、たいして成長していない。でも「こんなもんやで、みんな」。
――ふだんは大人しい子でも、何人かで群れていると、変なノリになりますからね。
金城 子どもの初期衝動が残っているというか、いじめにしても、ふざけるにしても、暴力的なことをノリでやってまうから。だから世間に喧嘩を売るわけじゃないけど、がんばって成長して終わり、みたいな普通な話にはしたくなくて、大人ぶってもしゃあないやろ、こんなもんやろ、みたいなものは入れましたね。
――そういった悪ノリのところにパイセンみたいな「お財布」的な存在がいたら、悪ふざけに拍車がかかっちゃいますよね。学生時代に身近にああいう人がいたら、ヤバイですよ。
金城 僕は学生時代、身近に「金を持ってないパイセン」がいたんですよ。
――大学のサークルだとよくいるタイプですよね。
金城 卒業したのにサークルによく顔出して、「このポスターまだあるんだ。俺の代の時にもあったぜ」みたいなこという奴。「知らんわ、全員がお前に興味あるわけちゃうぞ」って感じの奴、おるでしょ? そこに「金持ち」を当てはめて、それでつながっているような関係を成り立たせよう、と思いました。
――荒木先生は『ヤンキー塾へ行く』でヤンキーを描きましたけど、それで「荒木さんとやるならエロとヤンキー」と思ったんですか?
金城 それもあるんですけど、荒木さんの描くヤンキーはうまいんですよ。学校にヤンキーとかいました?
荒木 あんまり頭のいい学校じゃなかったから、いましたよ(笑)。でも本当にヤバそうな人は、すぐに辞めていなくなっちゃいました。
――作品のなかに凡下高(普通高校)と矢波高(ヤンキー高校)が出てきますが、「ヤンマガ」ってどちらかというと矢波高側じゃないですか。そのへんは意識しました?
金城 考えましたよ。というか、僕はヤンキー側の人間のおもしろさも、しょうもないところも見てきているんです。矢波高が凡下高に対して暴力を振るったり、カツアゲしたりしてますけど、やってる側のしょうもなさもあれば、やられてる側のしょうもなさもある。どちらにもおもしろいところと、腹の立つところがある。普通、どちらかしか描けないもんですけど、荒木さんは両方いける。そこは新しいのかな、と思いました。だから荒木さんとやるならヤンキーを出したい、と思ったんです。
――こういっちゃナンですけど、どちらにも「意識の低い感じ」がよく出てます。
金城 そうそう、意識が低い感じね(笑)。
――意識が低いからこそ、トビオのいう「そこそこ」にもリアルがあるんですよね。
金城 そうなんスよ。意識の低い奴のいうことじゃないですか、「そこそこ」て(笑)。スポッチャで遊んでいるシーンなんかは、意識の低い感じがよく出ていると思いますよ。
――取材はけっこうたいへんでした?
荒木 いや、そうでもないですよ。あ、4人で行ったのは鱧(はも)料理ですね。
金城 行った、行った(笑)。
――このマンガを読んだら、普通はスポッチャに取材に行ってると思いますけど、まさかの鱧料理!
金城 僕はスポッチャは1回しか行ったことない。
荒木 僕は行ってますけど、4人が集まったのは鱧料理でしたね。
――なんで鱧になったんですか?
金城 「料亭で食べる物といえばなに?」みたいに相談しているときに「鱧なんかどう?」って意見が出たんですよ。それで「鱧いいッスね」と。だからこれも大喜利みたいなノリです。
――まあ、高校生の発想に鱧料理ってないですね。
金城 普通ないでしょ?(笑)。
――どこで食べたんですか?
金城 けっこういいところでしたよ。ドラマとかで政治家が悪い相談しているようなとこ(笑)。ほんまに「カコーン」とか、ししおどしが鳴ってるし「こんなとこあるんや!」って。
荒木 鱧食べながら、普通に「次どうする?」って打ち合わせしましたけどね(笑)。
金城 なんやったっけ? 鱧しゃぶ? うまかったなぁ。
荒木 まぁ、僕は店を出た瞬間に「びっくりドンキーのハンバーグが食べたい」っていいましたけどね。
金城 いってた、いってた。「このあとハンバーグが食える」みたいなこと。みんな「マジかよ、お前」って。
荒木 味があっさりしてたので、ガッツリしたものが食べたくなったんですよ。
――話を戻しますと、「意識の低そうな感じ」が出ている、とのことでした。
金城 「意識が低い」って決して悪い意味で使っているわけではなくて、要は「普通」ってことなんですよね。意識の高い人に向けて描くマンガってのが、僕は苦手なんですよ。意識が高くて頭のいい人にしかわからないような賢い感じで描くんやったら書籍で書けやって思う。エンタメって誰でも読めるもんやろ、と思うんですよ。
荒木 風俗店の待合室に置いてあるマンガは、たいていおもしろいですもんね。
金城 それがマンガのあるべき姿やな。そういうののひとつになれたらいいな、と。
――わかりやすい善とか悪に落ちつけたくなかった?
金城 そう……ですね。最後はそんな感じかな? いや、全体的にそうか。わかりやすく終わる手もあったけど、それはちゃうやろ、と。
――良心の呵責に苦しむとか、そういうことじゃない。
金城 そうそう。「懺悔してないけどみんな生きとんねん」ちゅう話ですわ。その日の気分ですよ。
――打ち合わせの日の気分、てことですか?
金城 そうです、そうです。その日いちばんおもしろいマックスを出して……てのを第1話からやり続けてきたんです。