人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、金城宗幸先生&荒木光先生!
「それなり」の人生でよかったはずなのに、イタズラのつもりで仕掛けた爆弾が大事件に発展!? うっかり殺人犯になってしまった高校生トビオ、マル、伊佐美、そしてパイセンの青春逃亡劇のはてに待つものとは……?
主人公たちの清々しいまでの「クズっぷり」にグイグイ引きこまれる読者が続出、『このマンガがすごい!2017』オトコ編第11位にもランクインの超人気作『僕たちがやりました』。
今回は、先日発表された2017年夏のドラマ化決定、そして、ついに物語の幕が下りる最終巻第9巻発売と、ニュースだらけの本作について、原作・金城宗幸先生&作画・荒木光先生に聞いちゃいました!!
作中の会話に引けを取らない軽妙トークで語られる、本作の誕生秘話とは!?
2017年夏、全国ネットでテレビドラマ化決定!
――テレビドラマ化決定、おめでとうございます! 感想をお聞かせください。
荒木 当然、って思ってました。
金城 おお、強気やな。
――実写向きの内容ですもんね。
荒木 (メディア化)するんだったら映画かドラマだろうな、みたいな話はしていたんですよ。
金城 めちゃくちゃありがたいですね。ぶっちゃけ「もうかるな」と(笑)。僕は食うためにマンガ原作をやってるビジネス原作者ですから(笑)。「やったぁ、もうかるもうかる」みたいな。
荒木 何度か映画化のお話はあったんですけど、立ち消えになっていたんです。ちょうど年が明けて、マンガも最終回近くを描いているころに担当さんから「決まりそうだよ」といわれて。
――昨年12月に発売された「このマンガがすごい!2017」オトコ編でも11位にランクインしました。
金城 なんでもう1個上げてくれなかったんですか。
荒木 そうッスよ。
――すいません(笑)。
担当 金城先生の作品は『神さまの言うとおり』『神さまの言うとおり弐』(ともに講談社)でも担当させてもらったんですけど、セールスのわりにランキング系の評価は低かったんです。評論家からは無視されているような感じで。
金城 〝マンガ読み〟に嫌われるタイプのマンガ。それでも「売れりゃええやろ」とは思ってたんですけど、今作は今までとは違うやり方をして、それでこうして選ばれてみると、めっちゃうれしいですね。
荒木 二階堂ふみさんが票を入れてくれたんですよね。それ、100ポイントにできませんか?
――それだと「この二階堂ふみのオススメするマンガがすごい!」になっちゃいますよ。でも、テレビドラマ化すると、今までとは違った読者も入ってくると思いますが、いかがですか?
金城 一部のマニアにしか読まれないようではアカンので。広く一般に向けてつくろう、というのはつねに意識してました。
荒木 女の子に読んでもらいたいですね。
金城 女性読者かぁ、それは想定してなかったなぁ。「ヤンマガ(週刊ヤングマガジン)」(講談社)に女性読者なんて少ないやろうし。
荒木 女性ファン、めちゃくちゃほしいッスね。
金城 僕は、普段はマンガをあまり読まない男の子に読んでもらいたいですね。「マンガ=オタクのもの」って思ってる子らに読んでもらって、「うわ、マンガってこんなんもあるんや」って思ってもらいたい。「俺、オタクじゃないのにマンガでチンコ勃ってもうた」ってなれば最高ですね。それが最大目標ですよ。
荒木 それは最高ですね。
金城 あのマンガのあのキャラで覚えた情動を今も忘れられへん、ってだれにでもあるじゃないですか。青春時代に好きだった子のひとりに蓮子ちゃんがいる、ってなればエエなぁ。それに値するような女の子キャラは、この作品には出てきてると思うんですよ。僕が高校生や大学生の時分にこのマンガを読んだら、絶対に勃つんで。
荒木 あざっす。
金城 あ、今もちゃんと元気やけどな。
――そこは聞いてませんよ(笑)。
荒木 僕は金城さんからネームが送られてきた時点で勃ってました。
金城 マジか。俺のネームで? でも描いてる僕らが勃つ、っていうのも大事ですよ。荒木さんの描く女の子、めっちゃかわいいでしょ?
――かわいいですねぇ。ドラマでも役者さんはこの原作をコンテにすればいいんじゃないか、ってくらい細かい表情が描かれてますよ。
荒木 いや、もっとうまくならないと、とは思っているんです。
金城 そこは弱気かい(笑)。僕はネーム原作なので自分でネームを切るんですけど、その段階で表情も描くんですよ。それを荒木さんが作画すると、自分が思っていたよりも2倍も3倍もイイものがあがってくる。「こいつ、こんな風に仕上がったのかぁ」って感心することが多くて、それがキャラを方向づけていった部分もあるんで。さきほど「一般に向けてつくろう」といいましたけど、「もっと荒木さんの絵が世間に波及していけ」と思っていたし、そういうつくりにしようとも思っていたんですよ。
「金城宗幸×荒木光」ならではの作品
――もともと本作は、どういった経緯で始まったのでしょうか?
金城 僕と担当さんが「ヤンマガで何かやりたいね」って打ち合わせをしているときに、「今のヤンマガには『稲中』(古谷実『行け!稲中卓球部』)っぽいのがないね」って話になったんです。僕は古谷先生のマンガが大好きなので「じゃあ『稲中』みたいのをやろう」ってことになり、ネームをつくり、編集会議を通して、それで作画をやってくれる漫画家さんを探していたんです。だからこの段階では、トビオ、パイセン、伊佐美、マルの4人のギャグマンガやったんですよ。
――『稲中』路線だったんですね。
金城 そこにちょうど荒木さんが空いていたので、ネームを送ったら「おもしろい」といってくれたんです。
荒木 僕も古谷実先生が大好きなんです。
金城 でもね、荒木さんが作画やってくれるんやったら、完全なギャグだけじゃなくて、もうちょっとシリアスめな内容も入れられるんじゃないか? と思って。同じ古谷実先生でいえば、『シガテラ』とか『ヒミズ』(前出ともに講談社)みたいな。あと、エロ!
――エロ。
金城 荒木さんの絵でエロとヤンキーが見たいなぁ、と。だからエロとヤンキーがめっちゃ出る内容を考えていった、というのがこの作品の始まりですね。
――ヤンキー要素に関しては、荒木先生は以前『ヤンキー塾へ行く』(講談社)を描いてたのでわかります。でも「荒木先生でやるならエロ」と思ったのはなぜですか? そんなにエロいイメージはなかったですけど。
金城 その『ヤンキー塾へ行く』で、女の子がうまかったんですよ。だから「おっぱい出せよ!」と(笑)。「ケツとかパンツとか、もっと出させよう」って感じになったところに、僕が思う感情なんかを乗せていけば(作品として)成立するかな、と思ったんです。まぁ、当てモンですからね、そんなん。「合うんじゃないかなぁ」くらいの気持ちで。
――金城先生はマンガ原作者になる前は、芸人を目指してbaseよしもとのオーディションを受けたこともあるそうですが、もしかしたらコントのつくり方に似ているのかもしれませんね。
金城 ああ、それはあるかもしれません。当て書きというか。荒木さんにしても、どうやったらいい感じに踊ってくれるか、と。華麗に踊ってもらいましたよ。
荒木 いやぁ、でも(『僕たちがやりました』の)最初の頃の絵はヒドイな……。
金城 ええやん、俺は最初のほうの絵も好きやで。でも作中で荒木さんの絵がドンドンうまなっていきましたからね。この作品は「荒木さんの描く女の子の成長物語」みたいな部分もありますね。
――何か参考にしたんですか?
荒木 蒼井そらの安定感は素晴らしいですね。
金城 お、モデルおったの?
荒木 体は参考にしたモデルがいます。蓮子は小澤マリア、今宵は橘なお。
金城 へぇー、モデルいるのか。俺も今知ったわ。
――AV女優さんですね(笑)。荒木先生は、描いていてどのあたりが楽しかったですか?
荒木 基本、全部描いてて楽しかったです。普段の自分だったら描かないようなことも描けましたし、こんなのも描けるんだ、みたいな発見もありました。
――「ヤンマガ」は青年誌ですけど、少年誌との違いは意識しました?
金城 内容的なことに関しては、逆に「どこまでできるんだろう」と思ってました。少年誌には「切断面の描写はダメ」とかあったんですけどね。だから僕は好きにネームを描いてみて、それを担当さんが見て「エロ描写はここまで描いてはダメ」とか「完全にヤってるのはアウト」とかいってくれて、あとは荒木さんがエエ感じのとこに収めてくれた、って感じです。だから僕はあんま考えずにネームを投げてました。
――荒木先生はどこか気にされました?
荒木 いや、もう全然。好き勝手にやりました。あ、でも一度だけ、チンコのかたちがリアルすぎる、ってダメ出しされました。
金城 あったな(笑)。
荒木 今宵ちゃんがフェラしてるとこ(3巻第23話)、結局まっ白にトバしたんですよ。
金城 めっちゃイイけど、これは無理やろなぁ、って。
荒木 厳しいですよね。
担当 いや、エロマンガでもモロはアウトですよ。