生粋の「ジャンプ」っ子ではなかった幼少時代
――『ファイアパンチ』は藤本先生にとって初の連載作品です。なので、いったいどういうバックボーンのある作家なのか興味があるんですけど、どういったマンガがお好きだったんですか?
藤本 僕、小さい頃に『ドラゴンボール』とか『スラムダンク』って、読んだことがなかったんです。
――それは「ジャンプ作家」としては珍しくないですか?
藤本 子供の頃は『グラップラー刃牙』と『浦安鉄筋家族』を読んでました。
――「週刊少年チャンピオン」がお好きだったんですか?
藤本 父親が買ってきていたので読んでいたんです。あとは「月刊少年ジャンプ」(現在の「ジャンプSQ.」)。
――その時の「月刊少年ジャンプ」って何が載っていました?
藤本 『クレイモア』とか『ドラゴンドライブ』ですね。
――ひょっとして藤本先生が「ジャンプSQ.」に投稿したのって、その影響ですか?
藤本 そうですね。
――へぇー。最初の投稿作を描いたのは?
藤本 17歳の時です。「新都社」という素人がマンガを投稿できるサイトがあって、高校1年か2年のころからそこに落描きみたいなマンガをアップしてたんです。
――じゃあ石田スイ先生(『東京喰種 トーキョーグール』)やONE先生(『ワンパンマン』原作担当)がコミックスのオビ文に寄稿しているのは、そのつながりだったりします?
藤本 自分ではそう思っています。新都社出身の仲間意識というか。
――今の担当さんとは?
担当 初投稿作品からのつきあいなので、もう7年になるのかな?
藤本 けっこう長いですよね。
――藤本先生って、どんな印象でした?
担当 昔からネームを大量に見ているんですが、いつもすごいボールを投げてくる人だな、と思ってます。ただそれが、お客さんがおもしろいと思うところにたどり着けるか、という部分で、こちらから直しをお願いしてきました。これまで掲載された読み切り作品にしても、どんどん直していき、最後の原稿になったときにガンと上がるタイプです。
必見! 『ファイアパンチ』第1話の初期ネームをお披露目!
――これがそのネームなんですね、すごいです。
――そして、それが、これに! えぇーっ!?
担当 ネーム、初めて見るとビックリしますよね。 付きあいも長いので、このネームでも、どんな絵になるのかある程度わかってしまうんですよ(笑)。
――す、すごいですね……! 藤本先生は、この『ファイアパンチ』のアイデアは、どこから着想を得たんですか?
藤本 正直にいうと、全然おぼえてないんです。連載用にネタ出しした中にあった一本だったので。
――担当さんは、『ファイアパンチ』のアイデアを聞いた時に、最初はどう思いました?
担当 いや、もう、おもしろいな、と。またすごいボールを投げてきたな、と思いました。
――アイデア先行のタイプ?
担当 そうですね。絵に関しては、昔から「どうにかしないとね」って、ずっといい続けてきましたけど。
藤本 あんまり絵にこだわりがなかったんです。でも絵は大事なのもわかっているので、どうにか好きになれたらな、とは思っているんですけど。『ファイアパンチ』の第1話くらいまでは、ずっと画力のことをいわれてました。
――アクションを描くのはたいへん?
藤本 それまで読み切りを描く時って、映画でも「ドラマもの」をよく見ていたんです。読み切りだとオチとかカタルシス的な部分が大事になるので、アクションよりはドラマだな、と。だからそれまでアクションを描いたことがなかったので、担当さんに「どうしよう、アクション描けないよ」って。
担当 連載準備期間中に、すごくいろいろな資料を送って読んでもらっていたよね。
――一番参考になったのは?
藤本 参考……というのとは違うんですけど、好きなアクション映画は『ザ・レイド』。あとは北野武監督の、意表を突くというか、そこじゃないだろうと思わせておいていきなり見せ場、っていうのが好きです。どちらもマンガには活かせてないですけどね。
――さて、6月2日に『ファイアパンチ』最新第5巻が発売されました。ファンのみなさんに、メッセージをお願いします。
藤本 1、2、3巻が、序章です。 4巻5巻が、破章の途中までです。破章の終わりと、次章の始まりを楽しみにしてほしいです。
担当 藤本タツキ先生の圧巻のデビュー作。 毒もアクも強いですが、新しい表現が詰まった漫画だと思っています。 まずは1話の試し読みだけでもぜひに。 気に入っていただければ、「ジャンプ+」の連載でもぜひに読んでいただきたい。月曜毎週更新です!
――藤本先生、ありがとうございました!
取材・構成:加山竜司
藤本タツキ先生の『ファイアパンチ』も紹介している
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