シリアスな状況で起きるちぐはぐなノイズも描きたい
――作品内にも小ネタというか、マンガネタを差し挟んだりされていますよね。
渡辺 『ラウンダバウト』とか初期の頃はやっていたんですけど、いまは色々厳しくなっていて、あまりふざけられないなーという思いがあります。マンガはすごく好きなんですけど、自分が描くようになってからはみなさんすごすぎて落ちこんでしまうので読めなくなった時期があって。山口貴由先生の『シグルイ』とか、自分のマンガとは遠い所にある作品は影響を受けようがないので読んでいたんですけどね……最近はまた読めるようになってきたんですが。
『ラウンダバウト』 第1巻
渡辺ペコ 集英社 ¥552+税
(2007年10月16日発売)
――『1122』には、マンガだけでなく、『けものフレンズ』や『人間の証明』のパロディも登場します。物語のなかにさらりと入りこんでくる小ネタもおもしろくて、笑いがお好きなのかな?と思っていました。
渡辺 現実にもシリアスな場面や状況で、ユーモアというほどしゃれたものではない、くだらないことやちぐはぐなノイズが入ってきたり、自分が出しちゃったりすることってありますよね。そういうものが混ざっているのがふつうですし。題材がシリアスということもありますし。
――すごく辛いことがあって帰宅しても、パッとつけたテレビでくだらないことをやっていたら気分はブルーでも笑ってしまうことってありますよね。その感情の混じりあいがリアルで、作品世界に入っていけるところなのかなと思います。
渡辺 ありがとうございます。生きていると、感情や思考の中心に自分を置きがちですが、世界のなかでは自分は中心ではないというか、いろんな現象のなかの本当に一部じゃないですか。物語ですから主人公はいるんですけど、それは並行していろんな流れがあるなかのひとつだということは、いつも意識していることです。
――物語を描くうえで、多くの流れ、つまり「場」を描こうとすると、物語の推進力が失われて崩壊してしまうケースもあると思います。そのなかで、場を描きつつ、物語の本流となる主人公の気持ちも途切れさせないのは本当に難しいことだと思います。
渡辺 いやー、難しいですよね。「みんなすごいな~、どうやっているんだろ?」と遠巻きに見ながら描いています。
――それができている希有な作品だと思います。では、最後にメッセージをお願いできますか?
渡辺 続きものを描く時は、100パーセントそうなるかはおいておいて、山っぽいところのイメージと、終着点のイメージは持ちながら描いているんですね。ドラマティックに描くのは苦手ですが、自分なりに緩急つけて楽しみにしてもらえるよう描いていけたらと思っています。
――ありがとうございました!!
取材・構成:山脇麻生
<インタビュー第1弾も要チェック!>
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