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【インタビュー】鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』 歳の差58歳、おばあちゃんとの友情はBLからはじまった!?

2018/12/22


初々しいトキメキや感情を、シンプルな線で描出する妙味

──『メタモルフォーゼの縁側』2巻では、2人が初めてイベントに行く様子が丁寧に描かれています。小さい体験を積み上げるトキメキにあふれていますね。

鶴谷 私が最初にイベントに行ったのは、サークル側として出たコミティアで。それはまた別の緊張がありましたけど、Jガーデンのイベントにお客として行った時、ものすごくドキドキしたことを覚えているんです。好きな作家さんのブースを目指す期待感、声をかけていいのやらよくないのやらとかいろいろ考えちゃって、胸がいっぱいになって。そこに来ているものすごい数の人たちが全員そんな想いを抱えているわけなので、熱気がすごいんです! その熱気に圧倒されていました。

慣れもあり、忘れていたはずの“初イベントでの緊張感"を思い出した人も多いのでは。

──圧倒されつつ、自分もその熱気を出しているわけですよね(笑)。

鶴谷 そうなんですよ(笑)。自分がそこにいてお目当ての作家さんを目指す行動自体が、自分の気持ちを外に向かって出しているということで、それにも緊張していました。2回目以降は、「初めての時、なんであんなに緊張したんだろう?」と思いましたが。

──このくだりを読んでいると、うららのドキドキが伝染してきます!

鶴谷 自分自身の体験がいっぱい入ってるところなので、このシーンはすごく描きたかったところです。

──ほかにお気に入りのシーンはありますか?

鶴谷 2巻で、うららが雪さんに相談しにいったのに、結局その内容をいえないところですね。そういうことが自分にもけっこうあるので。最初に描いたネームでは、うららが口に出していうようにしていたんですが、しっくりこなくて。うららは、そんなふうに思っていることをサラサラしゃべれる人じゃないなと。それで描きかえたんです。

相談したいけどなんだか気をつかってしまううららの心情と、この絶妙な2人の距離感に、リアリティがともる。

──なるほど。だけど、うららが相談したいことをいえなかったために、雪さんが思いがけないパスを出し、それに触発されるというのが人間関係の妙だなと感じます。

思いがけない雪さんのひと言で、うららに変化が……? 今後の展開が気になる!

鶴谷 2巻ではほかに、雪さんがコメダ先生の絵が表紙になった雑誌を見つけて「親戚の子に会ったみたいな気分になっちゃって」というセリフが気に入っています。私も、いつもこんな気持ちなので……(笑)。

ほかにも、「次巻が読めるのは一年後……」など、マンガ愛にあふれるセリフが本作にはたくさんつまっている。

──雪さんが、「マンガ雑誌に連載されている」というマンガ読みからすれば当たり前のことを自ら発見して、そこに感動する初々しさにグッときてしまいます! こういう喜びを思い出させてくれることも『メタモルフォーゼ』の魅力です。本作へ寄せられた反響で、何か印象的なものがあれば教えてください。

鶴谷 フランスの出版社の編集さんから、「自分の国では年上の人は年下を見下してることが多く、年下は上を面倒臭いと思ってることが多いので、この関係は自分にとって新鮮だった」という言葉をいただきました。これは、文化や環境が違う国ならではの感想で、ハッとしましたね。今までいわれたことがなく、自分が思ってもみない観点からの読み方だったのがうれしかったです。

──趣味を通じて、同世代の友だちからは得られないものを得られる2人の関係に加え、2巻からは、紡と英莉、コメダ先生の周辺も描きこまれ、より先が楽しみです。うららが絵を描き始めたことも……!

鶴谷 ありがとうございます。より親しくなったうららと雪の関係性にも少しずつ変化が現れていくのも見どころになるかと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします!

取材・構成・執筆:粟生こずえ


インタビューディレクターズカット版はここまで! 本作にこめた先生の想いなど、た~っぷりと語っていただいたインタビュー本文は、『このマンガがすごい!2019』に掲載されています!

『このマンガがすごい! 2019』
『このマンガがすごい!』編集部(編) 宝島社 ¥680+税
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