映画好きならではの小ネタ そして気になる次回作
――いきなりでこんなに描けちゃうんですねぇ……。映画がお好きと伺いましたが、構図とかコマ割りとか、ちょっと映画的な気もします。
新田 映画は兄とかの影響で自然に見てて。もともとロードショーで『ジョーズ』とか『キャリー』とか『エイリアン』とか[注5]、ホラーやSF映画ばっかり見てて大好きだったんですけど、小6の時にコーエン兄弟の『バートン・フィンク』[注6]を見て、「あ、私こういうのが好きだ!」って。漠然とですけど、自分の趣向みたいなのにカチッとはまったんです。地元にいた頃は誰かと好きなものを共有するということをしてこなかったので、東京出てきていろんなイベントに行って人と話すようになって初めて「あ、私映画が好きなんだ」って気付きましたね。
――うーん、なんか地元時代の新田先生と小谷さんがちょっとダブってきました(笑)。細かいことですが、山下くんの部屋の映画ポスターもちょっとずつ変わってますよね。
新田 山下のその時の感情にあわせて変えてて。最初が『エターナル・サンシャイン』[注7]で、次が『クライング・ゲーム』[注8]で最後が『ポンヌフの恋人』[注9]。いかにも映画が好きな……、ちょっと映画に自分を重ねてしまいそうなロマンチックな男の子が好きそうな映画ってことで(笑)。自分の趣味を読者に押しつけるのはイヤなので、あんまりわからないように、ちょっとした遊びです。
――完結したばかりでちょっと気が早いですが、次作の予定などは……?
新田 まだわからないですけど、青森出身なので青森の雪景色を描きたいなと思うことはあります。青森の冬って空が閉ざされてて、雪も積もって圧迫感があって、でも見ようによっては白くて美しい。それを描きたいなと。あとは大人の恋愛で、共依存のカップルの話。私、自分もそういうところがあるので、小谷の次ならコレもいいかなって。
――それはすごくおもしろそうですね。ぜひ、作品化されるのを楽しみにしてます!
- 注5 『ジョーズ』とか『キャリー』とか『エイリアン』とか 『ジョーズ』は1975年のアメリカ映画で、監督はスティーヴン・スピルバーグ。巨大な人食いザメとの死闘を描いたパニック映画の傑作。『キャリー』は1976年のアメリカ映画で、原作はスティーヴン・キングの同名小説。いじめられっ子の少女が秘められた超能力を暴走させる傑作ホラー映画。2013年にリメイク版が公開された。『エイリアン』は1979年のアメリカ映画で、監督はリドリー・スコット、主演はシガニー・ウィーバー。大型宇宙船を舞台に、閉鎖空間のなかでエイリアンに襲われる乗組員の恐怖と戦いを描くSFホラーの金字塔。シリーズ4作品のほか、前日譚となる『プロメテウス』がある。
- 注6 コーエン兄弟の『バートン・フィンク』 ジョエル・コーエンとイーサン・コーエンの「コーエン兄弟」が監督・脚本を手がけた1991年のアメリカ映画。ハリウッドに招かれ映画の脚本を書くことになった脚本家が、宿泊先のホテルで体験する悪夢のような出来事を描いた不条理サスペンス映画の名作。1991年度のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール、監督賞、男優賞を受賞。
- 注7 『エターナル・サンシャイン』 2004年のアメリカ映画。記憶を消す手術をしたカップルの記憶と愛を巡る切ないラブストーリー。主演はジム・キャリーとケイト・ウィンスレット。2004年度のアカデミー脚本賞を受賞。
- 注8 『クライング・ゲーム』 1992年のイギリス映画。英国軍人とアイルランド共和軍の軍人との奇妙な友情、英国軍人の元恋人である謎の美女との甘美で危険な恋……巧みなストーリー展開とエンターテインメント性でアカデミー賞をはじめ数々の賞を受賞した。
- 注9 『ポンヌフの恋人』 1991年のフランス映画。ポンヌフ橋で繰り広げられる天涯孤独のホームレスの青年と家出放浪中の女画学生との純愛を描く。
『あそびあい』完結記念サイン会のお知らせ
『あそびあい』3巻の発売を記念して、2015年5月16日(土)14:00より紀伊國屋書店西武渋谷店にて、新田章先生の発売記念サイン会を行ないます。
なんとサイン会では、新田先生に描いていただきたいキャラクターのリクエストも可能とのこと! くわしくはコチラ!
取材・構成:井口啓子