池辺先生にとっての「理想の家」に迫る
——それでは、『プリンセスメゾン』に話を戻しますが、本作で、単身で家を買うということは、自分の「価値」や「在り方」を見つめ直すことでもあるような気がしました。ややもすると重い現実を前に、いさぎいいほど物がない部屋に住む沼越さんの前向きさが眩しいです。
池辺 私も家を買うってそういうことかもしれないと、描きながら思っていました。沼越さんは私にとってスーパーウーマンです。彼女は誰の価値観にも縛られず、誰かを羨むことなく、自分を嘆くこともなく、他人を排除しない。常識とか自分の見識が偏見かもしれないから、それで自分を縛ることはないんだと思いながら描いています。
——沼越さんのように信念を持って行動することは、この社会では簡単なことではないですよね。先生が彼女をスーパーウーマンとおっしゃるのもうなずけます。では、池辺先生にとって、「理想の家」とはどんな家なのでしょうか?
池辺 理想を言うとキリがないので、一番の条件は場所です。
——「場所」……その具体的なこだわりなどあれば、教えてください。
池辺 静かであること、若者が多すぎないこと、控えめなところ、自然があること、ある程度のものが揃う大きめのモールがあるか百貨店があればなおよし……などの条件がありますが、結局はその場所に行ってみての印象や、接した人たちの雰囲気などで住みたいかどうか決まるのかなと思います。この仕事は場所を選ばないので、家を考える前に一生ここに住みたいと思える場所を見つけるところから始めたいですね。街になじむのは私にとっては面倒なことなので、面倒だけど付き合っていこうと思える場所があればいいなと思います。
——家を考える前に場所を見つける……たしかにそうですね。では、池辺先生は「家」というものをどういう場だと捉えていらっしゃるんでしょうか。
池辺 私にとって、今は「家=仕事場」です。将来は安らげる場所になればいいなと思います。
—先日、待望の2巻が発売されました。読者の方へむけて2巻の見どころをぜひ教えてください。
池辺 そうですね、16話と17話は、今までと違ったアプローチの仕方をしたというか、違う視点で見てみようと思って考えた話で、自分のなかでは印象に残っています。
——16話は里田さんの風変わりなご近所さんがじつは……というお話で、17話は編集者の平松さんのお話ですね。17話の最後のセリフは個人的にこみ上げるものがありました。
池辺 まだまだ未熟で伝えきれていないことも多いと思いますが、ぜひ読んでみていただきたいです。よろしくお願いいたします。
——ありがとうございました。
取材・構成:山脇麻生