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『黒博物館 ゴースト アンド レディ』藤田和日郎インタビュー 「『このマンガがすごい!』は不愉快!」 インタビューは波乱の幕開け、その全容とは……!?

2016/03/27


藤田先生が語る、「漫勉」の反響

——2015年9月にNHK Eテレ「浦沢直樹の漫勉」に出演されたときに、「下書きナシの一発描き」「ホワイト(修正液)で線を成形」「ワリバシで描く」といった技法的な面が注目されました。反響はいかがでした?

藤田 うーん……、鵜の目鷹の目でそういったものを探そうとするのも、また違うと思いません?

——とおっしゃいますと?

藤田 仕事でマンガを描いているんですから、そういった(技法的な)ことは些細なことなんですよ。

——そこに注目が集まるのは本意ではない?

藤田 絵を描く時って、緊張するんです。「うまく描きたいな」という気持ちがありますからね。だけど、毎週毎週同じ感じで絵を入れていくと、手クセで知らず知らずに描けるようになっていくんです。たとえば冷蔵庫を描くにしても、最初はじっくり観察して一生懸命に描くんだけど、次はちらっと見ただけで描けるようになって、だんだん時間短縮されていく。そういうことを何年も繰りかえしていると、たいていのものやポーズはソラで描けるようになるんです。

——それはよいことではないんですか?

藤田 緊張感がなくなっちゃうんですよ。緊張感がなくなって描くことに飽きがくると、「原稿を編集さんに渡せればいいや」という気持ちになってしまう。表情やポーズを一発描きするのが、緊張感を持って飽きずに続けられる自分なりのやり方なんですよね。

——ワリバシを使って描くのも同じような理由ですか?

藤田 そういうカンジですね。

——小島剛夕先生[注1]なんかもワリバシを使って描いていたそうですが、藤田先生は太い方を使って描くんですね。

藤田 小島先生はそれこそ竹ペンとかの時代の方ですから、正式な技術としてはそちらにお任せするとして(笑)。俺の場合は思いつきですから。太いほうがコントロールしにくくて、普段とは違う線になるのがおもしろいんです。

先生の秘具!? その名も“ワリバシ”。「なに」で書くか「どう」書くかよりも、「純粋なおもしろさ」を追求し、毎回迫力ある絵を描いている藤田先生。

先生の秘具!? その名も“ワリバシ”。「なに」で書くか「どう」書くかよりも、「純粋なおもしろさ」を追求し、毎回迫力ある絵を描いている藤田先生。

——制御できないのがおもしろい?

藤田 マンガを描いていて「いま自分の心がおもしろくないな」って時は、すごく重要なサインだと思うんです。そういう時は物語の起伏を忘れて、物語の説明をするだけになっている。「説明終わったからいいでしょ?」みたいな。少年マンガは、心を揺さぶるような気持ちで描かないといけないような気がするんですよねえ。「説明が終わりました、ハイ次いきましょう」みたいな観光バスのノリだったら、マンガは絶対におもしろくならない。だからね、描く時の自分のモチベーションを高めるために、ワリバシを使ったり、薄墨を使ってみたりするんですよ。もしかしたら、俺のやり方で印刷所の方に迷惑をかけているかもしれない。だけどごめん、「俺がおもしろい気持ちで描いたら(マンガは)おもしろくなるんだ」という感じでやらせてもらってます。

——自分が新鮮な気持ちで描くための工夫。

藤田 「ホワイトを使ったら緊張感も何もないじゃないか」とも言われるんですけどね。

——「ホワイトを線の成形に使う」ことより、「紙に向かう意識を高める」ことが主目的なんですね。

藤田 そう、それが一番言いたかった! テレビを見た人は「あんなやり方はできない」とか言うんですよ。だけど俺が言いたいのはそういうことじゃなくって! 紙に向かうのって怖いんだ。特に俺は「描くこと」に対するハードルを描かないうちから自分で上げちゃって「うまく描きたい」「恥をかきたくない」「馬鹿にされたくない」とか、いろいろな思いがあって、なかなか一歩目を踏み出せなかったんですよ。

——いまも漫画家をめざしている若い人に、そういう気持ちの人は多いと思います。

藤田 でもさあ、描いちまえばいいんですよッ! 道具さえあれば誰にでもマンガは描けるんだから。描いていればそのうちうまくなるんだし、とにかく紙に向かって描こうぜ! ってことなんですよ。だからね、「あんなやり方はできない」と思われるのは俺の本意じゃない。俺は「できるやり方」をやってんの!

——最初の一歩目を軽くするために。

藤田 そういうことです。マンガにとって一番大事なことって、じつは絵を描くことじゃない……って、みんなわかってるんじゃない? 頭のなかで考えていることがものすごく重要なんだ。何を伝えたいか、読者にどう思ってもらいたいか。それが大事なんだ。絵がハードルになってそれを出せないというのは、悔しくてしょうがないじゃないか。「うまく描きたい」とか「馬鹿にされたくない」とかはひとまず置いといて、まずは“蛇口をひねる”ことが大事なんだよ。

TV放送でも話題となった、ホワイトを持ってニッコリの藤田先生。

TV放送でも話題となった、ホワイトを持ってニッコリの藤田先生。

藤田先生の開口一番の発言にドキドキしたものの、“漫画家・藤田和日郎”から語られた「このマンガがすごい!」への思い、そして先生の「おもしろいマンガ」へのまっすぐな姿勢に、本当に圧倒されたこのマン編集部一同(※同行した編集長の目がたいへん輝いてました)。……って、アレッ? そういえば、肝心の『黒博物館 ゴースト アンド レディ』の話は!?

というわけで、『黒博物館 ゴースト アンド レディ』の制作の裏側に迫るインタビューは次回!! 4月2日公開予定だッ!!
こちらでも先生が、『黒博物館 ゴースト アンド レディ』をとおして、さらにマンガづくりへの熱い思いを語ってくださったので、ぜひお見逃しなく!!


取材・構成:加山竜司
カメラマン:辺見真也


  • [注1]小島剛夕先生 「漫画アクション」で連載された『子連れ狼』(原作:小池一夫)などが代表作の漫画家。迫力あるタッチの絵は筆や割りばしによって描かれていた。一時期、白土三平(代表作『カムイ伝』)のアシスタントをしていたこともある。

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