日常生活、クーデター、裏設定……
アニメでは描かれなかった敵・ウルガルの“素顔”とは?
――ウルガル[注1]側の社会も描かれていて、初めて敵側がどんな組織なのかも小説版で理解できました。
宍戸 そこを描くことも最初から決めていて、最初の企画段階では1ページくらいの構想でしたが、そこから膨らませて最終的に小説版のような形になりました。ウルガルの文化を描くということも今回のテーマのひとつでしたね。アニメスタッフの方からいただいた資料と、アニメの映像からイメージを膨らませて書きました。
――小説には、テレビシリーズに登場したウルガル側のキャラクターも多数登場します。ファンからすると、じつはウルガル側のキャラクターたちが最初は敵対していた、という前日譚はけっこう驚きだと思います。
宍戸 もとの設定はクーデターがあったくらいしかないので、そのあたりは完全に僕が考えた設定です。ガルキエ[注2]の側近のようなドルガナなんかは、最初からガルキエの隣にいたんだろうなとか想像しながら書きました。描写するうえで難しかったのがジアート[注3]ですね。ガルキエとの関係性については、デリケートに扱いました。
――ジアートとガルキエという、一見似ても似つかない兄弟の関係も、小説版で初めて明らかになりました。
宍戸 それも監督からはざっくりした設定をいただいていたのですが、それをもとに執筆しました。テレビシリーズの段階で、すでに「かつてクーデターが起こって、皇帝が入れ替わっている」というような裏設定がじつはあって、今回はそこを膨らませました。
――ちなみに小説版のなかで、好きなキャラクターはいますか?
宍戸 あんまり自分で書いて好きか嫌いか、ということは考えません。あくまでキャラクターはキャラクター。思い入れは持たないようにはしています。逆にみんな好きと言えば好き。嫌いなキャラクターというのはいないですね。
――書籍版『はじまりの少女、約束の螺旋』には、ネットでは公開されていない5.5話が収録されています。
宍戸 完全に息抜きのエピソードですね。最後までご飯を食べる描写がなかったので、「トウマはどうやってご飯を入手しているんだろう」という疑問が出るだろうなと思って、その補完エピソードです。こういう描写を入れることで日常感も出るだろうと思いまして。ちなみにここで出てくる魚は、テレビアニメにも出ていました。たぶんジアートは食べたことはないんでしょうけどね(笑)。
――じつはこういうシーンも描きたかった、というエピソードはありますか?
宍戸 ページがあったらラダ[注4]が裏切るシーンとかも描きたかったですね。トウマから「裏切りそう」みたいに言われていたのに、裏切るシーンがありませんでしたから(笑)。それと、アリスたちテルス・クルーの大半は序盤にすぐ退場しちゃったので、もうちょっと活躍させたかったというのはありますね。とはいえ、そこを長くやっちゃうと、作品としておもしろいかというとそういうわけではないので、痛しかゆしです。
劇場版脚本を務めながら、小説執筆に至った経緯、そして公開されていなかったウルガル人たちの裏設定や秘話について、たっぷりお話してくださった今回のインタビュー。
次回は、さらに小説の魅力をうかがうとともに、小説版&劇場版に関するネタバレ必至なスペシャルな情報をお届けしちゃいます! 第2弾の記事は10月31日(月)公開予定ですので、ぜひこちらの記事もお見逃しなく!
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- [注1]ウルガル 正式名称は「銀河渦状腕全域絶対権力統治主権者による悠久なる統一国家」。「タ・ヘヴァラ(宣託)」や「シカーラ(狩り)」といった神事が国政に参与する。宇宙に進出を果たした地球人類を襲い、長きにわたる戦いを繰りひろげる。
- [注2]ガルキエ ウルガルの皇族で、ジアートの母親違いの兄。アニメ本編ではガルキエが現皇帝として地球を攻め入る。小説版では、ガルキエがクーデターを起こす経緯が明らかになる。
- [注3]ジアート ウルガルの皇族。好戦的な性格をしており、アニメ本編では戦場でチームラビッツに邂逅し、 狩りの相手が見つかった事に歓喜し、主人公の強敵としてたちはだかる。小説版では、ジアートがガルキエについていく経緯も描かれる。
- [注4]ラダ ウルガルのレガトゥス(軍団長)のひとり。ヒステリックかつサディスティックな性格をしており、容赦なく敵を殲滅する。アニメではキャラクター性や言動が話題をよび、ファンに愛されていたキャラ。
取材・構成:有田シュン