『富士山さんは思春期』で身長181センチという規格外のヒロインを生み出したオジロマコト先生。インタビュー後編では、先生が漫画家を志した経緯、『富士山さんは思春期』に込められた想い、そして誰もが気になる上場と富士山さんの今後について語っていただきました!
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【インタビュー】 巨人の次に来るのは巨大女子!? 『富士山さんは思春期』 オジロマコト 【前編】
漫画家になった経緯
――オジロ先生が漫画家になられた経緯をお聞きしたいのですが、 そもそもどういったマンガがお好きだったんでしょうか?
オジロ 自宅に自分の本棚がなかったので、自分でマンガを買うってことがなかったです。 マンガを買うようになったのは、他の漫画家さんのアシスタントをして初めてくらいです。
――アシスタントするまでは、ご自分でマンガを描いたりはしていたんですか?
オジロ なんとなく子どもの頃から絵は得意で、趣味でイラストを描いたりはしてました。 小学校、中学校と、人に見られている場所で絵を描くのは嫌いじゃなかったので。 ただ、コマを割ってマンガにするということはしてなかったですね。
――イラストは描くけどマンガにはしない。
オジロ 高校は、一応、美術コースだったんですけど、そんなにちゃんとしたところじゃないですよ。 あんまり上手な人のところにいくとヘコんじゃうんで。 だから、世の中にいろいろな漫画家さんがいますけど、 デビューまでいちばんマンガを描いてないのは私なんじゃないかと思ってるほどです。
――そこから実際に漫画家になろうと思ったきっかけは?
オジロ 結構うまく描ける自信はあったんですね。漫画家になれるんじゃないか、と。 なってみたら、すごく大変でしたけど。
――あまりマンガを読んでいなかったようですが、そのなかで影響を受けた作品とかありますか?
オジロ 友だちの家でよく読んでいたのは『らんま1/2』[注8]。少年マンガが多かったですね。 あとは『バナナフィッシュ』[注9]とか。
――キャラクターとかはどうですか?
オジロ 水木しげる先生の『河童の三平』[注10]の三平と、タヌキとか。ああいうキャラクターが好きですね。というか、水木先生のキャラクターはみんな好きです。
――水木先生、お好きなんですね。
オジロ そうですね、水木しげるロード[注11]にも行きましたよ。
本作の特徴・モノローグの少なさ
――本作にはモノローグが少ないのも特徴といえます。
オジロ 最初のネームの段階では、一生懸命書いていたんですけど、担当さんから「要らない」と。
担当 オジロ先生にお願いしたのは、上場のモノローグはアリだけど、牧央モノローグはナシでということです。 それは、男から見たら女って一生わからないじゃないですか。それにオジロ先生は画力があるので、牧央がなにを考えているか、表情で出せると思うんですよ。怒っているとか、喜んでいるとか。
――でも描き手の心理としては、説明したくなっちゃうこともありませんか。
オジロ そうですね、セリフを書かないことは手抜きなんじゃないか、って思うこともありますから。
――サービス精神がアダにならないように、ストップをかけてもらっているわけですね。
オジロ 絵に関してもそうです。私、けっこうやりすぎちゃうほうなんで。 もっとサービスしたほうがいいんじゃないか、とセクシーにしたつもりが、 下品になっちゃったり。
- [注8]『らんま1/2』 高橋留美子による格闘ラブコメディ作品。「週刊少年サンデー」(小学館)にて、1987年から1996年にかけて連載された。水をかぶる女性になってしまう主人公・早乙女乱馬と、ヒロインの天道あかねを中心に描かれるドタバタ劇。
- [注9]『BANANA FISH』 吉田秋生によるアクションサスペンス作品。「別冊少女コミック」(小学館)にて、1985年から1994年にかけて連載された。ストリートギャングのボスである主人公・アッシュが「バナナフィッシュ」の謎をめぐって、国家をも揺るがす壮大な陰謀に巻き込まれてゆく。
- [注10]『河童の三平』 水木しげるによる代表作の一つ。長野県の山中村に住む河童によく似た外見の少年・三平が河童の世界に迷い込んだことをきっかけに冒険を繰り広げる。
- [注11]水木しげるロード 鳥取県境港市にある商店街の通称。境港市出身の漫画家・水木しげるの記念館があり、商店街のいたるところに水木作品のキャラクター(『ゲゲゲの鬼太郎』『悪魔くん』『河童の三平』など)の銅像が立つ。