1つひとつの話も練られていておもしろいが、2話の次に起きたエピソードが3話、そのあとが4話……となってないのが本作のスゴさ。
各話の順番がバラバラの、いわゆる「時系列シャッフル」だ。
すでに完結した原作のアニメ化なら例はあったが、現在進行形の連載マンガで11年越しにやり遂げたのは前代未聞だろう。
その時間経過を見抜き、いつ起こったのかを考察することもファンの楽しみだった。
たとえば第11巻の83話「闇に棲む声」は、中学卒業後に缶蹴りした話を高校入学してすぐに回想しているから第1巻のエピソードより前のこと。
第6巻では歩鳥の髪がベリーショートになる話のあと、数話ほどもとの髪型に戻っている。
ということは……? とピースを見つけては、大きなパズルを埋めていく。
「作者からの挑戦状」に名探偵・読者が挑むメタ構造があったのだ。
手がかりは人間関係、人と人とのつながりにもあり。
初め「高校でできた友達」にすぎなかった辰野俊子がタッツンと呼ばれ、メイド喫茶で働くようになり、しだいに親しくなる。
途中で歩鳥を雑な扱いをしたものの、次第に見直すようになり……と距離感が変わっていく。
「友だちが親友になる道のり」の感動とともに謎を解く糸口になる、このうまさ!
時系列シャッフルは、じつは本作のタイトルにも直結している。
連載時の最終話である「少女A」は異例の「終わってなさ」だが、つまりは以前のエピソードのどこかに“つながっている”ということ。
第16巻のあとも丸子町の日々は続き、「それでも町は廻っている」わけだ。
どこにつながっているのか、作者の考える「最終回」はどのエピソードなのかなどは、副読本の『それでも町は廻っている 公式ガイドブック 回覧板』で明かされているが、「ネタバレどころじゃない」ということで、本記事では伏せておこう。
最終巻には13ページのエピローグが収録されており、これがすばらしくカタルシスある大団円。
このハッピーエンドを胸に、全16巻のコミックスを読みかえして「廻り続ける」ぜいたくな楽しみができるのだ。
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)、『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』、『超ファミコン』(ともに太田出版)など。