「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、TVドラマ『あなたのことはそれほど』
2組の夫婦マリッジライフと、四者四様に揺れる恋愛模様を予測不能な展開で繰り広げていく注目作『あなたのことはそれほど』が、4月18日からTBS系火曜10時の連続ドラマとしてスタート。
原作は『このマンガがすごい!2015』のオンナ編で第15位を獲得している、いくえみ綾の同名コミックだ。
ヒロインの渡辺美都は、初恋でずっと好きだった相手、有島光軌と偶然再会し、運命を感じる。しかし、美都にはまじめで料理上手な夫・涼太がいる。
さらに、じつは有島にも麗華というしっかり者の妻がいるのだが……。
美都役には波瑠。NHKの連続テレビ小説『あさが来た』の白岡あさ役など、まっすぐで賢い女性のイメージが強い彼女が、一変して恋愛体質の既婚女性を演じるのが驚きだ。
彼女の夫である涼太は、こちらもNHKの連続テレビ小説『ごちそうさん』でよき旦那様を演じた東出昌大。キャストも含めてお似合いのカップルに思えるのだが、美都にとって涼太は「2番目に好きな人」でしかない。
美都の「運命の恋」のお相手となる有島光軌は、ちょっぴりチャラいが、優しくて人当たりがよく憎めない男だ。演じるのは、劇団EXILE所属の24歳・鈴木伸之で、まさに「いくえみ男子」(原作者・いくえみ綾の描く素敵なイケメン)にふさわしいビジュアル!
ずっと好きだった彼が、こんなにいい感じに成長して、目の前に現れたら……これは「運命」に抗えない!?
そんなモテ男・有島の妻である麗華役は仲里依紗。『ハチワンダイバー』など、マンガ原作実写ドラマのかわいらしいヒロインが印象深い女優だが、理知的にふるまう妻をどう演じるのかが、このドラマの肝となりそう。
原作はセンセーショナルな不倫を主題にしつつ、「恋愛」と「暮らし」を丁寧に描きだす深いストーリーでもある。
結婚に向いた相手を選びながらも、燃えるような恋愛もしたい──。そんな隠れた欲求は、美都や有島だけでなく、だれにだってあるのでは?
愛する人に裏切られてしまう涼太や麗華の出方も気になる。
大人な2人の関係だけでなく、まわりを大いに巻き込む不倫の魔力を、とくとご覧あれ。
TVドラマ『あなたのことはそれほど』を観たあとに……
何を隠そう、「このマンガがすごい!WEB」は、マンガの情報サイト! そんなわけで、TVドラマ『あなたのことはそれほど』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガを紹介しちゃいますよっ。
『あなたのことはそれほど』いくえみ綾
『あなたのことはそれほど』第1巻
いくえみ綾 祥伝社 ¥933+税
(2012年11月8日発売)
※最新第5巻は4月25日発売予定
「運命の恋」のゆくえは……?
有島とは温度差があることに気づいた美都は焦り始め、涼太はそれでも美都を愛するあまりに様々な行動を起こし、美都を追いつめていく。
一方で有島は、妻も母親も完ぺきにこなす麗華を前にして、いたたまれなさを禁じえない。第1巻にある麗華と有島のなれそめは有島の無邪気な優しさが際立ち、美都と涼太のおいしい食卓を囲んでの、落ちついた生活にも憧れる。この頃に戻れないか、つい何度も読み返してしまう……。
一歩進むたびに、出口がふさがれ袋小路になっていく展開が痛々しいが、そこへいたるやり取りは生々しくかつスリリングで、ページをめくる手が止まらない!
原作マンガ『あなたのことはそれほど』のほかに、このマンガもおすすめ!
『潔く柔く』いくえみ綾
『潔く柔く』第1巻
いくえみ綾 集英社 ¥390+税
(2004年11月25日発売)
こちらは、2013年に長澤まさみと岡田将生の主演で映画化されている同著者の作品。
心に大きな傷を負っている瀬戸カンナと赤沢禄。2人はバーで偶然出会い距離を縮めるうちに、抱えてきた罪悪感と向き合う……。高校生~20代頃の、彼らにまつわる周囲の人々の恋愛や成長をオムニバス連作として丁寧に描き、脇役だった人がメインになったり、意外なところでつながりがあったりと巧みに構成されている。
個々の登場人物の心理の掘り下げも深く、特に、カンナに嫉妬して卑屈になる千家百花は陰の主役といえるのでは?
それぞれに魅力あふれる「いくえみ男子」も満載!
『ママレード・ボーイ』吉住渉
『ママレード・ボーイ』第1巻
吉住渉 集英社 ¥390+税
(1992年12月発売)
高校生の小石川光希は、両親の離婚という衝撃的な事態に直面する。それどころか、旅先で知り合ったという松浦夫妻と、お互いパートナーを交換して再婚し、同じく高校生である松浦家の息子・遊を含めて全員が同居することに!
連載当時は、光希と遊の恋の行方にドキドキした「りぼんっ子」が多いかったと思われるが、大人になって読みかえすと、この小石川・松浦夫妻の交換結婚ってかなりヤバイ気が……。とはいえ、彼らはあっけらかんとしている。
不倫のドロドロは、パートナーや家族、生活を失う恐怖からも湧き出るもの。それを保証されていれば、アリ?
いやいや、「両親S」の複雑すぎる過去を知った光希と遊の苦悩を思うと、やっぱり不倫はおすすめできません!
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。