日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『あなたのことはそれほど』

『あなたのことはそれほど』 第4巻
いくえみ綾 祥伝社 ￥920+税
（2016年10月8日発売）

Ｗ不倫を主軸にして、2組の夫婦＝男女4人の視点でエピソードが紡がれる『あなたのことはそれほど』第4巻。アラサーの不倫カップル、渡辺美都（わたなべ・みつ）と有島光軌（ありしま・こうき）の関係も、いよいよ煮つまってきた。

美都の浮気を突き止めても、なじるどころか「ずっと君を愛する」と高らかに宣言した夫の涼太（りょうた）。常に行動を見張られている針のむしろ生活から逃げ出した美都は、カプセルホテルや友人の家を転々としていたが、結局は涼太につかまってしまう。

一方の有島家も不穏な状況。
妻の麗華（れいか）は夫の行動を疑っており、光軌はひやひやしながら美都との逢瀬を続けていた。
クールで感情をあまり表に出さない麗華だが、この4巻では心の内を光軌にぶつけるシーンも。

美都と光軌は中学時代の同級生。美都にとって光軌は初恋の人であり、初めての人でもある。
中学卒業後も忘れられずにいたが、1年前に5歳年上の涼太と出会い、まもなく結婚。
しかし美都にとって不動の1位は光軌であり、夫は2番目に好きな人なのだ。
だからして偶然、光軌と再会し、燃え上がってしまった以上、「あなた（涼太）のことはそれほど」という気持ちにしかなれないのである。

これが10代の恋愛ならデジタルにくっついたり離れたりするのだろうが、アラサーの既婚者同士ではそうはいかない。光軌にズブズブの美都にしても、お互いに離婚して、2人で幸せな未来を築くことなど、とても想像ができない。
ゆがんだ愛情と打算と牽制が入り乱れる4人の精神戦が、どのような着地を見せるのか興味津々だ。

＜文・奈良崎コロスケ＞
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。『金メダル男』（内村光良監督）の劇場用プログラムに参加しております。