複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。
今回は、「プレミアムフライデーを知らせるブラジャーの登場」について。
『内田理央写真集 だーりおといっしゅうかん。』
内田理央(著)今村敏彦(写真) 集英社 ¥2300+税
(2016年11月28日発売)
プレミアムフライデーを「プレ金」と略すのは、センスが古くないッスかね?
ともあれ、プレミアムフライデーのキャンペーンが開始されてから3回目の月末・金曜日を迎えた。実際に制度として導入しているかどうかはさておき、その名前は広く浸透してきたことと思う。
それを証拠に、このほど女性用下着販売会社トリンプ・インターナショナルが「プレミアムフライデーブラ」を発表したのであるッ!
プレミアムフライデーが消費喚起を目的としていることから、この「プレミアムフライデーブラ」はカップががまぐち財布型。胸元のアラームは、プレミアムフライデーが始まる午後3時に設定できるようになっているのだッッ!
こいつぁプレミアムだッッ!!
トリンプ・インターナショナルは、時事ネタをテーマに取り入れたオリジナルの「ユニークブラジャー」(いずれも非売品)を年に2回発表している。過去には、カップがプランターになっていて農作物を栽培できる「マイ田んぼブラ」(2010年)や、ソーラーパネルで発電できる「太陽光発電ブラ」(2008年)などをリリースしてきた過去があるだけに、ギミック満載な「プレミアムフライデーブラ」も「さすがトリンプ!」といったところか。
とにかく金曜日というものは、13日になるとホッケーマスクの怪人が出てきたり、吉田美和さんが決戦の日として指定したり、元来プレミアムなのであるッ!
胸突き八丁、何かが起こる金曜日。
そこで今回は、マンガ界でのプレミアムなフライデーをチェックしていこう。
『猫と私の金曜日』 第1巻
種村有菜 集英社 ¥400+税
(2013年6月25日発売)
まずは『猫と私の金曜日』(種村有菜)。
主人公の立花愛は、高校1年生の図書委員。憧れのイケメン・芹沢先輩は本が好きで、週末に読む本を借りるために、毎週金曜日に図書室に本を借りにくる。この時ばかりは、人気者の芹沢先輩を独り占めできるのだ。
バレンタインの日、愛は意を決して芹沢先輩のために告白の手紙を書くが、いざその時になると、手紙が見当たらない。さらに、携帯に登録した芹沢先輩のメールアドレスも消えてしまっていた。
どうやらそれは、愛が家庭教師をしているいとこの猫太(小学5年生)の仕業のようだが……。
芹沢先輩が図書室に本を借りにくるのが金曜日なら、愛が猫太の家庭教師をするのも金曜日。とかく金曜日が大きな意味あいを持つのが本作。愛、芹沢先輩、猫太の三角関係……といえばわかりやすいのだが、愛と猫太の“おねショタ”感がまさにプレミアム。物語冒頭の「金曜日には魔法をかけて」「私はお姫様に」「猫は王子様になるの」のモノローグは、プレミアムなフライデーを彩るのにふさわしい惹句ではないだろうか。
『ちょっとフライデイ』
ひかわきょうこ 白泉社 ¥429+税
(1982年7月25日発売)
そして金曜日の出会いを描いたものとしては『ちょっとフライデイ』(ひかわきょうこ)という中編がある。
主人公の弥生は極度の近視で、メガネをかけていないと周囲がよく見えない。そんな弥生がメガネを壊してしまい、雨の日の金曜日にメガネ屋まで出掛かけることに。すると、彼女が傘を開いた瞬間に青年が倒れたので、弥生は自分のせいだと勘違い。結局、その青年にメガネ屋まで送ってもらうことになるのだが、その時の親切な青年を弥生は「Mr.フライデイ」と名づけて、おぼろげな輪郭や声の記憶を頼りに、「Mr.フライデイ」を探しだす……というストーリー。柔道部の悟先輩と佐久間先輩のどちらが「Mr.フライデイ」なのかを探るというギミックを活用しつつ、やはりこちらも三角関係となる。
やはり金曜日は、運命的な出会いが待っている曜日なのだ。
『リイド文庫 サバイバル』 第1巻
さいとう・たかを リイド社 ¥571+税
(2001年6月11日発売)
そしてマンガ界最重要のフライデーといえば、さいとう・たかを『サバイバル』に出てくるフクロウだッッ!!
主人公の鈴木サトルは中学生で、友人と洞窟を探検中に地球規模の巨大地震に遭遇。文明の崩壊した世界を舞台に、サトルは懸命にサバイバルをする。
様々な知恵を駆使して、少しながら食糧の取り方をおぼえたサトルであったが、そんな彼を悩ませるのはネズミであった。せっかく備蓄し始めた大切な食糧が、ネズミによって食い荒らされてしまったのだ。
そんなサトルにとって救世主となるのが「フライデー」と名づけたフクロウであった。最初は非常食のつもりで飼い始めたものの、ネズミを取ってくれるので大助かり!
サトルは頼もしい相棒をえた……のだが、夜行性のフクロウは昼は活動が低下してしまう。そんなフライデーに、嗚呼、ネズミたちの反撃が始まるのであった!
どうなる、フライデー! 負けるな、俺たちのフライデー!
フライデー、それは運命の出会いが待ちわびた日。
次のプレミアムフライデーこそ、午後3時には退社して、出会いを求めて町へ出てはいかがだろうか?
今度のプレミアムフライデーは5月26日、大安!
何かが……何かが起こる!
その胸の高鳴りこそが、キミだけの「プレミアムフライデーブラ」だッッ!
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama