そんな過酷な戦場を舞台に、兄を殺した犯人の手掛かりを追う神藤マホ。
並みいる強敵に立ち向かい、己の拳でマンガ デス・ロードを切り開いていく彼女は強い。「物理的」に強い。
好奇心を倍増させる経穴を衝いて強制的にネームを読ませたり、承認欲求を司る経路の「極部」を衝いてSNSの使い方を忘れさせたり、手の厥陰心包経(けついんしんぼうけい)の天泉(てんせん)から中衝(ちゅうしょう)にかけて呪いの経穴を衝いて1週間以内に100ページのネームを描かないと一生ペンもスマホも持てなくしたり、さすが格闘ものの主人公は違うなぁ〜と感心させられる次第。
しかし、数多くの外道がはびこる戦場のなかで、血と魂でマンガを描き続ける者もいる。
打ち切りの決まった作品であっても残り原稿を全力で仕上げ、漫画家の矜持を貫こうとする諸星花雄(もろぼし・はなお)の姿に、マホは亡き兄の姿をダブらせる。
主人公が強すぎるので、健気なヒロインポジションはこの人の肩にかかっているという気がする。
件社からの密命を受け、打ち切り作家・諸星の陰茎と玉袋を潰したあとにジワジワなぶり殺そうと、利き腕折り三人娘が付け狙う。
件社を支配する巨大な編集王との対決の日はいつか!?
兄を殺した犯人とは!?
血に染まるまんが道を踏みしめ、神藤マホは突き進む!
……と、本編も見どころたくさんだが、羽海野チカ、大川ぶくぶ、押見修造、清野とおる、藤田和日郎、森繁拓真、山本さほといった錚々たるメンツからの応援コメントが並ぶ第1巻の帯の「完成度」が異様に高い。
「これ絶対"当て書き"で書いてから許可もらってるよね!?」としか思えないコメントが並んでいて思わず噴く。
ハッ!? これが本編でいわれていた「1ページから伝わる『華』」なのか!?
おそるべし! マンガ業界っ!!
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。学年誌の傑作ウルトラ記事を集めた新刊『学年誌 ウルトラ伝説』が6月28日に発売! 4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。