話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『狭い世界のアイデンティティー』
『狭い世界のアイデンティティー』著者の押切蓮介先生から、コメントをいただきました!
『狭い世界のアイデンティティー』 第1巻
押切蓮介 講談社 ¥570+税
(2017年4月21日発売)
この腐りきったマンガ業界のなかで、漫画家としてのし上がるには、マンガ力だけでは足りない……
“暴”の力でマンガ業界を邁進せよ。
マンガ業界最大手のひとつ件社(くだんしゃ)が帝王ホテルで催す謝恩会は、著名な漫画家や関係者が集まる欲望の宴。
年間新人賞の佳作を受賞した主人公の神藤マホ(しんどう・まほ)は、壇上に居並ぶライバル受賞者をたちまち瞬殺!!
……って、ええ〜!? 殺すの!? 殺しちゃうの!?
そう、ここは血で血を洗う醜悪な戦場。
週刊青年マンガ誌グッドナイトにマンガを持ち込みに行った末、ビルから突き落とされ殺害された兄の復讐こそがマホの願いなのだ!
マンガ業界を格闘ものとして描く押切蓮介の『狭い世界のアイデンティティー』の第1巻。
これは押切版「まんが道」なのか!? いや、これは血と怨嗟と妄執で彩られた「マンガ 怒りのデスロード」だ!!
この世界でマンガを描くことは、すなわち命のやりとりにほかならない。
新人作家の利き腕は芽が出る前に潰せ!
打ち切り作家は磔!
老害作家には鉄槌を!
とにかく出てくるキャラクターが悪い表情しか見せないのが潔い。
漫画家、編集者、営業、アシスタント、書店員。
己の欲望に忠実で、他人を蹴落とすことに戸惑いを見せないキャラクターばかり。
ありとあらゆる場面で繰り広げられる血しぶき、血吹雪、血煙のオンパレード。
その戦いには一理あったりなかったりするのだが、なかにはハッとさせられるような一面の真理を説く言葉も見受けられる。
血まみれの荒野だからこそ、そうした言葉の輝きもひと際増す。