話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『このマンガがすごい! comics 形式結婚 出会って1時間結婚編』
『このマンガがすごい! comics 形式結婚 出会って1時間結婚編』
柳沢きみお 宝島社 ¥590+税
(2017年6月7日発売)
人間の三大欲求は「食欲」「睡眠欲」「性欲」。この3つのなかで、性欲だけは異質だ。食べなければ死ぬし、眠らなくても死ぬ。しかし、セックスをしなくても死ぬわけではない。このように死に直結するわけではないが、とても切実な欲求であるのも性欲の特徴だ。
そんな人間の持つ根源的な“性的欲望”と“性の悩み”を真正面から捉えつつ、徐々に暴走していく問題作が『形式結婚』である。著者は「週刊少年サンデー」で『翔んだカップル』をヒットさせ、70年代後半から80年代前半のマンガ界に空前のラブコメブームを巻き起こした柳沢きみお。
本作は80年代後半から青年誌へと活躍の場を移した柳沢が1992年より「漫画アクション」にて連載、だれしもが持つ性の悩みにスポットを当て、大きな共感と反響を呼んだ。四半世紀の時を超えてこのたび復刊されたが、社会的・文化的背景こそ違えど、性の悩みは不変だと思い知らされる内容である。
舞台はJリーグ発足前夜。社会人2部リーグ「ジャパンビール」に所属するサッカー選手の要石畳(かなめいし・たたみ)は、昼は営業マン、夜はハードな練習を消化する多忙な日々を過ごしていた。要石はサッカー部のイケメンエースで本来はモテるタイプだが、社内では女嫌いとして有名だった。
じつは10年前に初カノとベッドインした際の事件がトラウマとなり、女性恐怖症となってしまったのだ。おかげで27歳にしていまだに童貞である。