やがて要石は同じような悩みを持つ男性恐怖症の令嬢・白戸香織(25歳)と知り合い、2人はあれこれ詮索してくるまわりの目を避けるため、打算的に形式結婚の道を選ぶことに。一般的なラブストーリーであれば、仮面夫婦が少しずつ各々の異性恐怖症を克服し、本物の夫婦になっていくという展開になるのだろう。しかし、ここから物語は予想の斜め上を驀進する。
当初は「SEXがなくても愛し合える男と女の関係だってあるはずだ」と考えていた要石だったが、はけ口のない性欲の虚無感に覆われ、いつしか「どこでもいいから入れてみたい!!」という想いを募らせる。その矛先は彼に想いを寄せるゲイの後輩へ!?
また、要石夫妻が新居に選んだマンションの隣人たちも、それぞれ大きな性の悩みを抱えていた。右隣に住む弁護士の美女・石内は不感症で、左隣に住むカメラマンの立尾は短小×インポなのだ。
そんな隣人たちは、内情を知らずに壁1枚隔てた新婚カップルの夜の営みを想像し、地団駄を踏む。そしてこのあとは要石夫妻が真実の愛に目覚めるどころか、隣人たちを巻きこんでの「性のお悩みバトルロワイヤル」に突入する。
深刻な性の悩みを抱える登場人物たちはみな悲壮感が漂うが、基本的には柳沢節全開のコメディタッチでパッケージされており、その軽さに救われる部分も。はたして「俺の男根が、ただの排泄用でない日がくるのか」と、人知れず涙を流す要石に明るい未来は待っているのだろうか?
あぁ、応援せずにはいられない!
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。