「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品を紹介! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』
あの『ジョジョの奇妙な冒険』の実写映画化が、ついに実現ッ!!
シリーズ累計発行部数1億部を超える大人気作品が、誕生から30年となる節目の“ジョジョ・イヤー”である今年、実写映画となってスクリーンに登場する。 映画の題材となるのは、ファンのあいだでも人気の高い“第四部”こと「Part4 ダイヤモンドは砕けない」編。杜王町を舞台に、主人公・東方仗助は形ある超能力<スタンド>を駆使し、愛する町を守るために<スタンド>使いと戦う。
原作の「Part4 ダイヤモンドは砕けない」編は、コミックス第29〜47巻までの19冊分に相当する。原作未読の方からすれば、途中から見て理解できるか不安になるかもしれない。しかし、『ジョジョ』は、シリーズ(第一部、第二部など)ごとに主人公が異なるので、原作未読のまま映画を見てもまったく心配は無用。
くわえて、第四部のもうひとりの主人公的な存在である広瀬康一に関する設定が、映画では「杜王町に引っ越してきた転校生」と変更されている。観客は広瀬康一の目線を共有し、彼の目を通じて「ジョジョの世界観」や「杜王町」を見ていくことができるのだ。そうした映画ならではの配慮がなされているので、原作ファンはもちろん、いままで「ジョジョ」ワールドに触れてこなかった人も、ぜひとも誘いあわせのうえ、スクリーンで本作を堪能してほしい。
気になる映画の内容だが、すでに公式ティザーサイトで公開されている特報や予告の動画には、東方仗助(山﨑賢人)、広瀬康一(神木隆之介)、山岸由花子(小松菜奈)、虹村形兆(岡田将生)、虹村億泰(新田真剣佑)、アンジェロ(山田孝之)、空条承太郎(伊勢谷友介)といったキャラクターが登場している。各キャストのビジュアル再現度の高さも注目ポイントのひとつだが、これらのキャラクターが登場することから、映画本編は第四部冒頭の虹村兄弟との戦いがストーリーのメインになることが予測される。
さて、『ジョジョ』といえば、やはり注目すべきはバトルシーンだ。<スタンド>は超能力をビジュアル化したような存在で、<スタンド>使い同士にしか見ることができない。いわば幽霊のような存在だが、そんな<スタンド>がどのように表現されるのか、興味は尽きないところだ。たとえば仗助の<スタンド>の「クレイジー・ダイヤモンド」は、あらゆるものを修復する特殊能力を備えている。また、虹村億泰の<スタンド>の「ザ・ハンド」は、空間を削り取る特殊能力がある。これらの<スタンド>能力が、実写とCGでどう描写されるのか。また、<スタンド>同士のバトルでどう演出されるのか、気になるところ。
監督の三池崇史は暴力描写や残酷表現に特徴がある映画監督で、『殺し屋1』(2001年)や『着信アリ』(2004年)などは世界的にも高い評価を得ている。その一方で、『サラリーマン金太郎』(1999年)や『ゼブラーマン』(2004年)、『クローズZERO』(2007年)など、ゴア(残酷シーン)を排除したマンガ原作のエンターテンメント作品も数多く手がけてきた実績がある。斬新な視覚イメージをふんだんに取り込んだ、手に汗握るような<スタンド>バトルに期待したい。
この夏の本命、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』は、8月4日から全国ロードショー開始。グレートでゴールドな映画体験(エクスペリエンス)を体感しよう!
映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』を観たあとに……
今回、映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガ作品を紹介しちゃいますよっ。
『ジョジョの奇妙な冒険』荒木飛呂彦
『ジョジョの奇妙な冒険』第29巻
荒木飛呂彦 集英社 ¥390+税
(1992年11月4日発売)
映画本編の題材となる、『ジョジョの奇妙な冒険』第四部を原作で楽しむには、単行本第29巻からをオススメしたい。
第一部から第三部までは、ジョースター家とDIOの、時代を超えた宿命の戦いが描かれてきた。世界中を股にかけたワールドワイドな展開を繰り広げてきたのに対し、この第四部は日本の杜王町(仙台市がモチーフ)という、きわめて限定的な空間が舞台となる。朝になれば牛乳が配達され、学生たちは学校へと通い、放課後には喫茶店でお茶をしたり、休日には犬を散歩する市民がいる……。
そんな当たり前の日常が丁寧に描かれていくので、原作ファンであればだれしもが杜王町で暮らしてみたいと、一度は考えたことがあるはず。
『ジョジョの奇妙な冒険』のほかに、このマンガもおすすめ!
『ジョジョリオン』荒木飛呂彦
『ジョジョリオン』 第1巻
荒木飛呂彦 集英社 ¥438+税
(2011年12月19日発売)
『ジョジョ』シリーズの最新作『ジョジョリオン』は、現在は「ウルトラジャンプ」(集英社)にて連載中。本作はシリーズのPart8(第八部)に位置づけられている。
映画の題材となる第四部以来、ひさびさに、だが第四部とは異なる新たな杜王町を舞台にしているのが第八部だ。第七部以降は、<スタンド>などの設定は従来シリーズと同じものだが、まったく別世界の話として進行している。そのため、第八部には第四部と似た名前の人物などが登場するが、まったく関連性はなく、別作品として楽しみたい。
杜王町は3月11日の大震災によって大打撃を受け、地面の下から隆起してきた「壁の目」によってライフライン(道路、水道、電気、ガスなど)が断たれてしまった。震災から半年後、杜王町に住む大学一年生の広瀬康穂は、「壁の目」付近で裸の青年を助ける。青年の名は東方定助。記憶を失っており、この「八代目ジョジョ」が自分が何者なのかを探っていく冒険がはじまる。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama